本研究では,学習内容の記憶(記銘)と再生を高めるための学習支援機能を,デジタルテキストに組み込む手法を研究開発した.学習するテキストに対して,学習者がアノテーションを加えていくが,その支援の目標は,動機付けと記憶しやすい材料を提供することである.この観点から,本人にとっての「面白さ」を含む文と画像を,自ら作り上げるアノテーション機能を構築し,その特性の調査を調査した.具体的には,学習テキスト中で記憶したいキーワードを選択し,それに対して学習者に関係した情報(身近な人物や趣味)を含むテキストと画像をつけるソフトウェアを構成した.学習者に関係するものを選択して合成する操作は,主観的注釈と言えるが,これにより,動機づけと記銘効率の向上を実現することとした.これらの機能を,PCとタブレットコンピュータに実装して,評価実験による効果を確認し,改良を行ってきた.模擬デジタル教科書は,中等高等教育程度の社会,理科の科目の教科書を参照して独自に作成したものを用いた.評価は,模擬学習の実験を実施し,記銘効果と動機づけの効果を定量化している.画像での注釈をつける提示装置には,タブレット端末(iPad)を用いているが,同様な構成はPCでも利用できる.画像は,趣味的な擬人化キャラクタ,すなわち既知の漫画の擬人化キャラクタを用いた.これを合成する手法として,フォトモンタージュを用い,記銘対象を表す画像をインターネット検索によって得た上で,趣味のキャラクタ画像を組み合わせさせて記銘させるシステムを構築した.キャラクタ画像の意味的な特性として,記銘対象との整合性が記銘の効率に与える効果を調べた.その結果,キャラクタ画像と記銘対象の整合性により,再生率が2倍程度改善すること,主観評価としての動機づけと記銘容易性が高められることが明らかとなっている.
|