本年度は,データの追加を行うため,新任教師を対象に同様の研究を行った。対象は,小学校3年生道徳の授業である。メンターは,元校長であり,メンティの大学からの指導教員である。これまでの事例と同じく,授業設計段階の記録3回(ICレコーダーによる録音記録),オンゴーイングによるメンタリングのビデオ記録,ビデオクリップに基づく事後インタビュー(ICレコーダーによる録音記録)のデータを収集した。 これまでのデータの中で中学校国語教師を対象とした事例に関して,「わざ」あるいは「わざ知識(craft knowledge)」の獲得支援という視点から分析を行い,メンター教師の授業場面でのコメントは,一貫してその教師自身の授業に関する実践的理論に基づいていること,そしてその実践的理論に対応した教師行動を示していることが明らかになった。その分析結果ついては,ヨーロッパ教育学会(ECER2016)で発表を行った。 また,同じ教師によるもう1つの事例に関して,メンタリングが行われる場を区別するinsideとoutsideという視点から分析を行った。これまでの事例から,特に指導案作成段階でのメンタリングがない場合,insideメンタリングだけでは十分な支援はできないことが示されていたので,授業中のinsideメンタリングと授業前のoutsideメンタリングの関係を明らかにすることを目的とした。授業前のメンタリングと授業中のメンタリングの関係に焦点をあてて分析を行った結果,メンター教師も教材研究を十分に行うこと,また単元目標,授業目標を明確にし,それをメンティと共有するために,「問い」という形式を多く用いてメンタリングをすること,などが明らかになった。さらに,insideメンタリングでは,事前の目標に基づく一貫したメンタリングが行われていた。結果は,ECER2017において発表予定である。
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