研究課題/領域番号 |
26560147
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
徳山 英一 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任教授 (10107451)
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研究分担者 |
谷川 亘 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (70435840)
村山 雅史 高知大学, 自然科学系, 教授 (50261350)
山本 裕二 高知大学, 自然科学系, 助教 (00452699)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺跡探査 |
研究実績の概要 |
高知県中西部沿岸部の3地点において海底調査を実施した。さらに、柏島の海底調査と関連のある仁淀川の鎌田堰跡でも調査を実施した。 野見湾内では、湾内の「戸島」から平坦地形が海面下へと連続に分布していることが確認されているため、かつての人間の居住区域が過去の地震によって海底下へと沈降した可能性がある。そこで、海底面表層の堆積物の試料採取を行い、堆積物の特徴を調べた。その結果、人工物の痕跡は確認できなかったが、家屋が建てられるほどの非常に硬い地盤であることが確認できた。 竜串爪白の海岸付近では、人工的に加工された痕跡のある石柱が海底に多数存在することが報告されている。そこで現地調査では、海底地形調査と海底石柱構造物の記録と回収を行った。海底の石柱はいずれも縦横20cmで、長さ約1mの大きさであった。回収した4つの石柱をCT画像解析などによって分析を行った結果、表面が非常に平坦で、人為的な削り痕があることが確認された。さらに、一部の石柱は中心に穴が空いていることも確認された。平行して、竜串海岸付近の陸上建造物の調査も行った。その結果、社寺の階段と民家の基礎を構成する石材が、海底石柱と同様の大きさであり、かつ同じ特徴をもつ削り痕を有することがわかった。 柏島海底では、石垣に類似した石積状構造物の存在が報告されていたため、海底地形調査と潜水調査により同構造物の確認および特徴を調べた。石積構造物は、水深が異なる2地点で海岸線に平行に50mと200mの長さにわたって分布しており、主に巨礫から構成されていて、その間は極細粒な白色のセメントで膠着していることが判明した。柏島の陸上で近年建設された防波堤と、江戸時代初期の土佐藩家老の野中兼山が建築の指揮を執ったとされる柏島および仁淀川の堤や堰も同様の特徴を持っていることから、年代・化学分析などにより比較を行う目的でセメント状物質の回収を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高知県内において海底遺構とされる存在が報告されており、かつ海底調査が実施可能な地域は現在のところ6箇所ある。これまでに南国十市沖、野見湾、竜串、柏島の4地域で調査を実施している。そのうち、南国十市沖と野見湾については、調査対象と作業仮説が構築できていないため、今後の調査の見通しが不透明である。しかし、歴史文献記録によると、野見湾には歴史地震により海面下に水没した集落が存在するポテンシャルが高いため、根気よく潜水調査を実施する必要がある。ただし、野見湾は海底堆積物が硬く、試料採取に困難をきたしている。竜串と柏島については昨年度の調査により、調査対象がそれぞれ「海底石柱群」と「海底石垣(石積)」と明確になった。さらに、それぞれの調査目的も明確で、分析試料も採取しているため、本年度中に結論(=海底構造物と歴史地震の関係)が得られるもとの期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
高知県内では、確実な記録・物的証拠が残されている歴史地震によって海底に沈んだ村や構造物の存在は今のところ確認されていない。一方、高知県外に目を向けると、明応地震・天正地震により静岡、千葉、滋賀県で確実に歴史地震により水没した村・構造物が存在することがわかっている。そのため、これら県外の海底構造物の特徴を調べて、高知県の海底構造物と比較することにより地震に伴う被害の証拠を明らかにしたい。 現在までに4地点で調査を行っているが、時間と予算を踏まえて、本年度は柏島と竜串の調査を集中的に行う(今後、別予算を確保することにより調査地域を拡大していきたい)。 柏島については、海底の石積構造物が人工物(防波堤)であるのか、あるいは自然作用によるものか(ビーチロック)を明らかにすることに焦点をおく。仮にビーチロックであった場合、石積構造物には少なくとも3段の段差がみとめられたことから、地震による沈降史の推定が期待できる。また、人工物(防波堤・堤)の化学分析の比較を通して、人工物の同定手法の確立にも本研究は繋げられる。 一方、竜串の海底石柱群は、陸上建造物に利用された石材と同じような特徴を持つことから、化学分析を通して、その類似性を確固たるものにする。陸上における過去の採石場の確認と昔の加工方法から岩石の起源を明らかにする。地震津波や沈降により陸上構造物が海底に水没した証拠を得るためには、水没年代を評価する必要がある。そこで表面に付着する遺物、海水と岩石の風化速度から水没年代の評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査予定を再調整し、執行する。
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