研究課題/領域番号 |
26560148
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (00392548)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文化財の材質調査 / X線回折 / 2次元イメージング / X線検出器 |
研究実績の概要 |
蛍光X線分析と比較すると、可搬型のX線回折は充分に実用化されているとは言えないのが現状である。従来の分析方法では、ゴニオメータを用いて、X線源とX線検出器が試料に対して同じ角度になるように動かさなければならない。文化財への安全性を考慮すると、このように駆動部が多いことは装置の設置や使用を不安なものとしてしまう。このことが、X線回折のための可搬型分析装置の普及が遅れている要因の一つであると考えられる。一方、分析したい角度領域をカバーするように、X線を2次元的に捕えるような検出器を固定すれば、装置全体の駆動部を減らすことができる。これが本研究の提案する新しいアイディアである。 分析装置の開発を実施する際には、分析の対象となる文化財の安全性を充分に考慮しなければならない。本研究の最初の段階で、開発を行おうとしている検出器に求められる仕様の検討を行った。 本研究では、簡便かつ安価なX線の2次元イメージングが可能な検出器の開発を目指している。このため、研究代表者らが開発したガス電子増幅フォイルとCMOS技術を用いた読み出し基板から構成される検出器を用いて実験を開始した。しかし、このようにCMOSを用いた読出しのための素子を2次元状に配置した検出器よりも単純化した信号検出の方法として、1次元のストリップ状のパッドを読出し基板に配置して信号読出しを行う方法が考えられる。連携研究者とともに、1次元ストリップ読出しができる検出器の開発に関して検討を行った。 検出器の開発と並行して、イメージングプレートを用いて、ラウエ像が得られるかを評価する基礎実験も進める予定である。この基礎実験のための、超小型X線発生装置の選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、開発を行おうとしている検出器に求められる仕様の検討を行った。そして予定通り、ガス電子増幅フォイルとCMOS技術を用いた読み出し基板から構成される検出器を用いて実験を開始した。また連携研究者とともに、1次元ストリップ読出しができる検出器の開発に関しても検討を行い、平成27年度までの実験計画を立てた。 しかし当初、検出器の開発と並行して、イメージングプレートを用いて、ラウエ像が得られるかを評価する基礎実験を終了する予定であったが、超小型X線発生装置の再検討に時間を要してしまった。装置の選定は終了したので、平成27年度の前半から実験を速やかに開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、選定を行った超小型X線発生装置とイメージングプレートを用いて、ラウエ像が得られるかを評価する基礎実験を実施する。 次に、昨年度までに開発を進めてきたX線検出器と、上述の超小型X線発生装置とを組み上げて、X線検出器の性能評価を行うためのシステムを構築する。このようにして構築したプロトタイプの検出器の性能評価を行うために、絵画や遺跡の彩色に用いられている顔料と同じ成分の標準試料、古墳等の遺跡や建造物で析出している塩類の試料を分析した時に、正しい回折像が得られるかどうかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、検出器の開発と並行して、イメージングプレートを用いて、ラウエ像が得られるかを評価する基礎実験を終了する予定であった。しかし研究開始後、最新情報をもとに、超小型X線発生装置の仕様を再検討したところ、装置の選定に時間を要してしまったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
超小型X線発生装置の選定と発注は平成26年度に終了しており、当該装置は5月に納品される予定である。納品後は速やかにX線発生装置とイメージングプレートを用いた実験を開始する予定である。
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