研究課題/領域番号 |
26560149
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
菊池 理予 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (40439162)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 文化財 / 文化遺産 / 包括的文化財保護 / 芸能 |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成26年度は、主に①宝生家に伝来する能装束の修復状況等の聞取り調査、及び②実演用能装束の修復材料の調査を行った。これらの成果を生かしながら、来年度以降も引き続き情報収集と整理をすすめる。 ①宝生家に伝来する能装束の修復状況等の聞取り調査 本年度は宝生和英氏(研究協力者)の協力を得て、宝生家に伝来する能装束の修復状況の実態について調査を行った。A.従来の修復の確認 実演用能装束は、演能前や虫干し等の際に応急処置として修復を行うことも多く、オリジナルへの可逆性を重視する染織文化財の修復とはかけ離れた修復が行われていることが明らかとなった。B.破損の原因の確認 能には決まった着装方法(出立)があり、それぞれの出立や能の型により負荷がかかる位置が固定するため、装束の種別により破損箇所が共通していることが明らかとなった。C.実演家からの聞き取りによる確認 実演家が能装束の修復に求めることとして、実演に耐えうる強度を確保しつつ動きに沿う裂の柔らかさを損なわないこと、薄物の場合は透け感も重視すること、さらに通気性も確保すること等があがった。 ②実演用能装束の修復に使用可能な材料の調査 能装束の多くは絹織物で作られているため、修復の主な素材である絹糸と絹織物に関する実態調査を行った。A.現状における用材の調査 現在美術館・博物館等施設に所蔵されている能装束の修理に使用されているクレペリン等の絹織物についても情報を収集し、サンプルを集めた。B.現在の日本における絹産業の実態調査 製糸生産の実状についての情報収集と整理を行った。それにより、日本で製糸業を行っているのは現在10件にも満たないことが解った。製糸は国内で行っているが、養蚕は国外より仕入れているものも見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である今年度は今後の研究を円滑に進めるため、これまで各分野内で行われていた研究を分野横断的な見地から見直すため、連携研究者及び研究協力者が集い勉強会や調査を行った。これにより現状の課題の情報共有と整理、さらには来年度以降解決していくべき問題について話し合う場を設けることができた。また、研究協力者に科学的な側面からも修復素材を検討できるメンバーを加えることで、より実用に即したデータを蓄積する見通しついた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究初年度に蓄積したデータ能楽師(研究協力者)からの情報を活かし、実際の演能と能装束にかかる負荷について能装束の種別ごとに整理を行う。 また、修復材料等について絹糸や絹織物のサンプルを収集しているが、それらの実験手法についても実演に即するように随時検討を加えていく。通常の絹糸染色堅牢度や引っ張り強度、摩擦強度だけでなく、管理検査(汗による変化)も考慮する必要がある。それらについては研究協力者に科学者を加えることで、より実用的なデータの蓄積を目指す。 研究コアメンバーで、調査データの整理を行いつつ、外部識者などを交えての研究会も積極的に行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査のための資料集めに時間を要したため、次年度に調査出張を計画しなおしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
調査出張を積極的に行う。
|