研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究の成果:主たる研究対象地として設定した秋田県六郷扇状地において,民家の屋根の雪及び生活道路の雪を地下水で融かす実験を行い,散水法により屋根の雪,生活道路の雪を融かすことが可能であることを確認した。ここで,積雪期間中に雪上に散水された地下水温は約10.0-11.0℃であった。さらに,融雪のために揚水した地下水と散水法によって生じた積雪水量(屋根の雪を測定)を既存の人工涵養池と消雪溝へ給水する実験を行った。積雪期間中,人工涵養池の浸透能は毎時25mmを超え,揚水量+積雪水量を人工涵養池で吸収することは可能である。消雪溝へは自然流下により導水した。加えて,江戸中期に六郷扇状地に築造された「堤」(「11. 研究発表」欄の肥田,2016を参照)の跡地は涵養機能に優れており融雪水等の水を涵養させる機能を備えていることを確かめた。このほか,全国的な視点から地下水・湧水の調査を行った。主な地点は平戸市,伊予市,関ケ原町,諏訪市,富士河口湖町等である。これらの市町においても,地下水温は雪を融かすのに十分な値を有していることを確認した。 補助事業期間全体を通じて実施した研究の成果:六郷扇状地の扇央・野中と扇端・馬町に設置されている,各20m,50m,100m深のピエゾメータを使って水理水頭と地下水温の観測(ロガー及び手動)を継続した。人口密集域にある馬町のピエゾメータの記録から,2016年1月(最寒月,日平均気温は零下1.2℃以下)の日平均地下水温の観測結果を例示する。20m,50m,100m深別に12.49℃,14.01℃,16.66℃であった。融雪には十分に活用できる水温である。また,融雪によって生じた水は地下水人工涵養池の水源に充てることが可能である。 今後の課題:高齢化社会において融雪装置,地下水人工涵養池,ピエゾメータ等諸施設の維持管理に関する研究は欠かせない。
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