研究課題
地震などの大規模な自然災害は百年オーダーでの歴史記録に残るケースはあるものの,数千年に一度といった大規模低頻度な自然災害の記録が残ることは稀であり,自然地理学的あるいは地質学的アプローチからその実態を解明する必要がある。本研究では,豊富な考古学資料から数千年前の明確な文化の断絶が立証されているものの,同時期に大規模な環境変化が報告されていない中央アナトリアにおいて,後期完新世の災害履歴・古環境変動と,それらが文化変容に与えた影響を明らかにし,さらに,同地域で将来的に起こりうる自然災害の現代都市への影響について検討を行い,今後の都市開発と防災・減災策を確立するための基礎情報を構築することを目的とする。本年度は,GIS(地理情報システム)およびRS(リモートセンシング)の一般的な手法を用いて,衛星画像,空中写真および広域地形データの解析から,対象地域の地形分類図の作成を進めたうえで,現地調査をキュルテペ遺跡発掘期間中の8月,10月の2回にわたって実施した。現地においては,表層地質(簡易ボーリングコア掘削),断層露頭の高精細計測と記載,山体崩壊による岩屑なだれ堆積物の高精細計測と露頭調査,盆地における表層微地形の高精細計測と河川プロセスとの関連,考古隊からの文献・歴史記録の提供,といった調査を実施した。その後,現地調査データと分析結果を日本国内で取りまとめ,GISデータベースへの集約,カタログ化を進めている。また,共同研究者間のみで共有するスペースをインターネット上に設置し,情報交換や進捗状況確認に利用した。
3: やや遅れている
GIS・RSデータの整備,現地調査の実施,調査データの保管・解析などについて,概ね計画通りに進行しているものの,その取りまとめ(コンパイル)の部分について若干の加算時間が必要である。現地調査では高解像度地形情報取得技術の適用も行うことができ,より高精細な環境データの取得が可能となったが,こうした重いデータ処理に想定以上の時間が消費された。また,研究成果については複数の学会において研究発表を実施しており,関連研究者とも有益な議論がなされている。
各種データ(現地取得データ,GIS・RSデータ)の整備・解析を継続的に行うとともに,取得した環境情報と,各種考古学的・歴史学的情報との整合性調査など,収集情報の集約と整理を中心に進める。これにより,本研究の目的である古災害・古環境変動と人類の文化変容との相互作用について考察を進めるとともに,論文発表として成果公表を行う。
データ処理に想定以上の時間が費やされたことからその整理が遅れていることと,学会発表の時期が4月であり,次年度使用額が生じた。
学会発表経費と,データ整理の補助作業にかかる謝金等に使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
地形
巻: in press ページ: in press
地学雑誌
巻: 36 ページ: 87-106
Antiquity
巻: 89 ページ: 596-612
10.15184/aqy.2015.30
In: Jaroslaw, J., Zwolinski, Z., Mitasova, H., Hengl, T. (eds.) Geomorphometry for Geosciences
巻: 1 ページ: 51-52