研究課題/領域番号 |
26560154
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
長谷川 直子 (石黒直子) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (60433231)
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研究分担者 |
山下 琢巳 城西大学, 経済学部, 准教授 (10509988) [辞退]
横山 俊一 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 研究員 (80714980)
大八木 英夫 日本大学, 文理学部, 助教 (50453866) [辞退]
早川 裕弌 東京大学, 空間情報センター, 准教授 (70549443)
谷口 智雅 三重大学, 人文学部, その他 (70449320) [辞退]
戸田 真夏 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 研究員 (80267393) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地理 / 地誌 / 旅行ガイドブック / ガイドマップ / 出版 / アウトリーチ |
研究実績の概要 |
本研究では一般の人に地理の素養を身につけてもらう手段としての、地誌的な視点を取り入れた旅行ガイドブックの形を模索している。市販の旅行ガイドブックと地誌的な視点とを融合させる試みの一つとして、研究者が作成するガイドマップはどうしてもテキストベースの難しいものになってしまうことから、遊び感覚を取り入れた学生目線の作品に注目し、「地理の視点を入れたまちあるきガイドマップの作成」演習を大学の授業の中で、4~6月に行った(この成果報告は7月の日本地理教育学会、9月の日本地理学会で発表)。 6月には、ツイッターを用いた巡検での情報共有の試みを行った(9月の日本地理学会で発表) 前述の授業で学生が作成したガイドマップを中心に、専門家のコラムなども加えた表参道・原宿エリアの雑誌の出版を行った(月刊「地理」2016年3月増刊「地理×女子=新しいまちあるき」古今書院)。この出版に至るまでの実践報告を3月の日本地理学会で行った。 この雑誌は、地理的な情報がほとんど無い市販のガイドブックでも、一般の人がアクセスしないようなテキストベースの地理専門書籍でもない、その中間を目指したものであった。この出版の反響は様々得られた。地理学界関係者からは内容のレベルが低いというネガティブな評価と「地理」のハードルを下げたというポジティブな評価があった。一番大きな成果は地理学界以外からの注目を得られた点である。特にタイトルにあった「地理女子」という概念が一般の人にとって斬新であったようで、テレビ業界や出版業界、街情報提供会社など様々な分野からのアプローチがあった。今後の一般普及を行なっていく上で、これらの業界とのつながりができたこと自体が大きな成果と考えている。 今回の成果発信と社会の反応から、今後の地理学のアウトリーチの一つの参考となる情報が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
萌芽研究でゴール地点(どのような形が地理の一般普及のためにベストなのか)がほとんど見え無い中で始めた研究であったが、2年度目の前半に書籍の出版が決まり、年度内に出版できたことは本研究の成果として重要であったと考える。 雑誌出版によって賛否両論様々な成果が得られた。学界内ではレベルの低さを指摘される一方で今後の地理学演習の参考になるという評価もいただいた。大学の授業テキストとして採用いただいた大学もある。なにより大きかった予想外の反応として、テレビ業界や出版業界、街情報提供会社などアウトリーチの主要な業界の方達がこの雑誌のコンテンツに興味を持ちコネクションを作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
もともとはアウトリーチの1手段として旅行ガイドブックに注目していたが、今回の雑誌の出版により、前述のようなテレビ業界や出版業界、街情報提供会社などとのつながりができた。そのため最終年度には、旅行ガイドブックに限らず、これらの業界をすべてひっくるめた地理学のアウトリーチのより良い形はいかなるものかについて、模索し、形を見つけていきたいと考えている。その形がわかれば、旅行ガイドブックやテレビ番組など、それぞれの手段での個別の実現方法や内容は自ずと形が決まると考えるためである。 また、まだ研究期間中ではあるものの雑誌の出版が出たこともあり、科研費のひらめきときめきサイエンスに採択された。この雑誌の情報をベースに2016年10月に高校生向けの成果発信を行う予定である。ここから高校生へ向けた地理学のアウトリーチについてもなんらかの知見と経験が得られ、次へつながる成果となると考えている。 また、昨年度から引き続き準備しているバスガイド教本であるが、唯一現存していた出版社が年末に廃業になったため、別の出版社から出版できる手立てを模索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度自体は予定どおり予算を支出したが、平成26年度の出張キャンセルなどによって生じた繰り越し額にほぼ相当する金額分がそのまま残り、繰り越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度はシンポジウムの開催による登壇者の謝金や会場費用に加え、最終年度ということで、成果発信のための学会参加旅費、成果報告書など印刷費用で調整できると考えている。
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