研究実績の概要 |
エジプト北部のナイルデルタ東側の最前線にあたる砂丘・ラグーンが繰り返される海岸平野を研究対象地域として完新世の環境変動の研究を行った。イドック湖とその周辺低地が自然環境の変動に対応してどのような地形変化を示したのかについて示すことにした。機械ボーリングを用いて対象地域において3本の試掘を行い、これらを5cm刻みで土壌サンプルをとりわけ粒度分析、EC,PH,花粉分析、珪藻分析を行った。また、ボーリング地点の周辺で電気探査を併用した。この研究は基盤研究A長谷川科研で行ったイドック湖沼周辺地域の先史ー歴史時代の遺跡立地を地形から解釈する研究の終了に合わせて申請したものである。しかしながら、中東地域、エジプト国内での社会的な混乱があったために現地調査が困難となり、一時、調査を中断したため当初予定の研究成果を上げることができなかった。現地調査が困難であったために研究内容を土壌サンプルの詳細分析、また、リモートセンシングを用いて地形分類図を作成に重点を移すことにした。ボーリング調査によって得た堆積物分析と地形分類図を用いて完新世における当該地域の海岸平野、古ナイル川の河川堆積物を次の3時期、1)3624 (yrBP),2)1508 (yrBP),3)369(yrBP)に歴史イベントが顕在化した時期としてとらえ、環境変化を次のように示した。1)ではイネ科が40%を超える、アカザ科は50%、2)ではガマ属が10%、イネ科は30%、アカザ科は60% 3)では稲科は20%、ガマ属は30%、アカザ科は50%という環境変遷指標、これらの表す指標と珪藻分析による環境指標は大よそ一致していた。そこで、これらの3時期において、地形分類図を基にして古地理復元図を示し、ラグーンの海水域から汽水域への変化を示した。湖沼後背地域におけるラグーンの拡大・縮小などを各々の時代で示した。
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