研究課題/領域番号 |
26560157
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
高田 将志 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60273827)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | pIRIR法 / 年代推定 / 変質 / サンゴ化石 / 南西諸島 |
研究実績の概要 |
本研究では、変質してカルサイト化したサンゴ化石に含まれる石英・長石粒子を抽出し、その光ルミネッセンス年代、特に長石のpIRIR(post IR Infrared Stimulated Luminescence)年代を求めることで、サンゴ礁段丘の形成年代を推定できるかどうかについて明らかにすることを目的としている。 上記の目的のため、本年度は、既に与那国島で採取していた未変質で年代既知(海洋酸素同位体ステージ5)の隆起サンゴ礁試料について、塩酸に不溶の砕屑物粒子の抽出を行い、抽出した砕屑物粒子がどのような粒度のどのような鉱物であるか、また、この粒子を用いた光ルミネッセンス年代測定が可能かどうか、などについて検討を行った。その結果、当該の砕屑物粒子のうち、2~10ミクロンサイズの微粒子の多くが長石粒子から成ること、また、この微粒子のルミネッセンス信号は、pIRIR年代測定が可能な信号強度と信号特性を有していること、が確認できた。昨年度の調査研究成果にもとづけば、実用的な年代値を求めるためには、長石粒子の内部線量評価が問題となるが、これについて、対象試料の238U濃度やカリウム含有量を測定し、内部線量の評価を行い、暫定的な年代値を求めてみた。その結果、既往研究のU系列年代が約140-110kaとされている試料から、約100kaの年代が得られた。ただし、ウラン系列の非平衡や初期放射性核種濃度など、年間線量評価に関して、まだ課題が残されており、次年度に、更なる検討を加える必要がある。 最終年度は、これまでの研究成果をもとに、サンゴ化石に含まれる塩酸に不溶の砕屑物粒子を用いたルミネッセンス年代測定について、実用的な年代値を得るための手法を確立したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未変質で年代既知の隆起サンゴ礁試料を対象とした暫定的なpIRIR年代値を求めるところまでは達成できているが、238U非閉鎖系や238U初期濃度などについて考慮した年間線量値の推定の部分に関して、まだ検討が不十分な点が残されている。この点をクリアしてから、変質した年代不明の隆起サンゴ礁試料の年代推定に挑戦する必要があると捉えているため、このような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度は、与那国島で採取した未変質のアラゴナイトサンゴ化石試料を対象として、サンゴ化石に含まれる塩酸に不溶な砕屑物粒子の抽出とルミネッセンス年代測定を行うためのノウハウを確立したいと考えている。与那国島のサンゴ化石からは、数多くのウラン系列年代値が得られており、それらの既往年代値と、pIRIR年代測定値との整合性について検討する作業を進めることで、相当程度の目標は達成できるものと考えている。現段階では、とくに238U非閉鎖系や238U初期濃度などについて考慮した年間線量値の推定が不十分なので、さらにこれを進化させるべく努めたいと考えている。また、与那国島の試料と並行して、宮古島の変質したサンゴ化石に含まれる塩酸に不溶な砕屑物粒子のpIRIR年代値を求めるための検討も進める予定である。 上記の宮古島や与那国島で採取した試料の検討結果にもよるが、同じ南西諸島の中では、喜界島のサンゴ化石についても既往年代値が比較的よく得られているので、時間的な余裕があるようなら、喜界島の試料についても年代測定用試料の採取について検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに採取済みのpIRIR年代測定用の試料処理に相当の時間を要したために、新規の試料採取の予定を繰り延べて、採取済み試料の分析に力を入れることにした。このため、現地調査旅費等を次年度に持ち越して使用することに予定変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
旧年度までに採取した年代測定試料の処理に目途をつけた段階で、さらなる試料採取を進めるための現地調査旅費として使用したい。
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