研究実績の概要 |
(1) 前年度に作成した天山山脈 6 号氷河における 2015 年の地形図を 2003 年のそれと比較した。この期間に氷河が後退しているのはもちろんであるが,氷河前面の高まりの部分の標高も顕著に低下していることが分かった。これは,Iwata et al. (2005, Bulletin of Glacier Research, 以下 BGR) で指摘されているように,6 号氷河前面の高まりがモレーンではなくこの下に氷河が隠されており,それが解けたためであると考えられる。
(2) 過去 30 年間における天山山脈 1 号氷河の変遷と気候変化との関係について考察した。1983~1994 年においては相対的に少降水量かつ低温であったが,降水量の効果が効いたために氷河は縮小した。1994~2004 年においては相対的に多降水量かつ高温であったために氷河の変化は小さかった。2004~2014 年においては相対的に少降水量かつ高温であったために氷河は縮小した。以上の内容を,2016 年 5 月に行なわれた TMU-TSU Joint Syposium 2016 において発表した。
(3) (2) の研究成果を BGR に投稿したが,すでに2014 年までの天山山脈 1 号氷河の変遷に関する論文(Wang et al., 2016, Environmental Earth Sciences) が公表されていることが,査読者の指摘によって判明した。本研究における 2000 年代以降の 1 号氷河付近の気象データは,山麓のウルムチのデータから推定していたこともあり,BGR に投稿した論文は取り下げた。
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