農村景観の重要な要素である谷津田を地図化するために、ポリゴンの幅を検出するGISの解析手法を応用し、日本で現在提供されているデジタル水田データの中から幅を基準に狭い水田を抽出して地図化した。一定の幅(幅100メートル)及び枝分かれする流域の形状基準を基に、水田ポリゴンの領域を「幅狭水田」と定義し、幅狭水田を水田ポリゴンから抽出するアルゴリズムを開発し、一貫した解析結果が得られるようになった。この解析アルゴリズムを適用し、全国データが揃う環境省現存植生図を主な対象として、水田を幅の狭い水田と広い水田に分類し、全国スケールの水田マップ化作業を進めてきた。また、高精度でのマップ化作業のために元データに含まれていたエラーの修正や幅狭水田検出用のアルゴリズムの改良や検出基準の調整などを加え、全国統一の狭幅水田データベースを構築した。更に、水田の耕作状況を推定するために幅狭水田データベースを人工衛星画像と比較した。主にランドサット画像を利用し、衛星画像に見られる湛水域を分類したデータセットを活用し、狭幅水田データベースにある水田ポリゴンを湛水されている領域とされていない領域に分類する手法を開発し、幅によって水田の存続が異なるかどうかを推測できるようになった。その結果、現存植生図に見られる水田領域の内、湛水されていないと推測できる領域をマップ化するとともに、幅の狭い水田はそれが広い水田より消失する可能が高いという状況を示唆する計算結果となった。
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