研究課題/領域番号 |
26560161
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
重野 芳人 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 名誉教授 (70108570)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大規模災害 / 物資の配送 / 道路網の破壊 / 迂回路 / 最適輸送 / agent-based model / 待ち行列 / GIS |
研究実績の概要 |
東日本大震災や今月発生した熊本地震に見られるような大規模災害の場合、道路の寸断→ガソリン供給の遮断→緊急に必要な物品や人員の供給の停滞が連鎖的に生じたため、迅速な物資・人員の配送ができず、被害の一層の拡大を招いた。そこで、当該研究者はこれまでSDM(System Dynamics Model)を利用した数学モデルにより、緊急かつ効率的に被災地に物資を配送するためのシミュレーションを実施してきた。しかし、大地震の際には、目的地までの多くの道路が被災するため、道路網の大部分が通行できなくなる。そのような場合においても、迂回路を自動的に選択し、更に目的地まで最も効率的に物資や人員等の配送を計画・実施する必要がある。このような問題はSDMでは扱うことは困難であり、個々の被災者と車両の位置情報及び道路網破壊による配送の停滞を加味した新しい数学モデルの創製が必要である。本研究では主に個々の車両の行動を表すABM (Agent-Based model)と渋滞等による待ち行列を表すDEM (Discrete Event model) を結合した数学モデルAB-DEMの開発を目指している。ただし当初DEMによる待ち行列のモデルを作成したが、開発の途中で、よりモデルをシンプルにし、ABMによる待ち行列の表現が可能になった。しかし、研究の実施計画は当初の計画と基本的には変化はなく、本研究で使用している、アルゴリズムを示すブロックダイアグラムで、入り口から入ったAgentは、渋滞のある分岐点(分岐1)でそのまま進むか迂回路を通るかの判断をする。更に渋滞がある場合(分岐2)で更に判断し、一部は迂回路1を通り、一部は迂回路2を通り主要道路に戻り、援助物質を被災地に届ける。途中で待ち行列を使用し、配送のタイミングを調整する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では道路輸送に焦点を当て、以下の点を明らかにすることが目的であり、研究の当初の計画を次に示す。1.ABMを使用し、道路網の一部が通行不能になった場合の目的地まで物資の配送 2.AB-DEMによる、必要な物資を必要なだけ最小時間で届ける最適配送シミュレーションの実施 3.GIS(地理情報システム)の情報利用による実際の配送のための最適な経路の選択 この一連の研究の流れの中で、現在の進展段階は2に相当する。即ち、具体的には1.待ち行列を組み込んだDEMにより目的地までの配送効率を最大にするアルゴリズムの開発を目指した。ただし当初DEMによる待ち行列のモデルを作成していたが、開発の途中で、よりモデルをシンプルにしたABMによる待ち行列の表現が可能になった。2. ABMのAgentを表すインスタンスに、待ち行列のアルゴリズムを組み込むことによるABMとDEM の結合を目指した。ただし、研究の進展段階で、ABMによる待ち行列の利用が可能になったため、モデルが計画時よりも更にシンプルになり、扱い易くすることが出来、最適配送シミュレーションがより短時間で可能になった。このことは非常に大きな成果である
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今後の研究の推進方策 |
1.GISデータに基づく道路網の作成上記道路網へのモデルの適用 2.通行不能箇所を組み込んだGIS道路網へのモデルの適用 GISデータに基づき、実際の道路を想定した道路ネットワークを作成する。ここで、線の幅は道路幅に比例している。実際の道路網にモデルを適用する場合は、迷路の代わりこのようなネットワークを使用する。 最近はGPSを利用した、通行可能道路の検索が可能になってきた。このシステムにより、現状の把握は可能であるが、通り易い道路にはより多くの車両が集中し結果的に交通渋滞が起こり、交通は遮断される。本研究では、このような道路網に対して道路が被災した直後にどのような複数の迂回経路をとることが可能かを予想し、またその時の最適配送条件も同時に検証す最適配送条件を検証する。
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