東日本大震災に見られるような大規模災害の場合、道路の寸断→ガソリン供給の遮断→緊急に必要な物品や人員の供給の停滞が連鎖的に生じたため、迅速な物資・人員の配送ができず、被害の一層の拡大を招いた。しかし、大地震の際には、目的地までの多くの道路が被災するため、道路網の大部分が通行できなくなる。そのような場合においても、迂回路を自動的に選択し、更に目的地まで最も効率的に物資や人員等の配送を計画・実施する必要がある。 本研究では個々の車両の渋滞等の挙動を表すABM (Agent-Based Model)とスタンドでの給油の待ち行列を表すDEM (Discrete Event Model) を結合することにより、渋滞と待ち行列が同時に生ずる場合を表す数学モデル、AB-DEMを作成した。 モデルの応用例として、近い将来発生が予想される南海トラフ地震で四国の高知県が津波で被災し、同時に地震で四国の道路網が寸断された場合を想定し、本州からの車による支援物資をいかに効率的に配送するかについて、AB-DEMによる解析結果を示した. 特に、東日本大震災の教訓として、給油スタンドでの車両への燃料供給および一次集積所における支援物資配分に伴う混乱が配送の遅れに拍車をかけたことは記憶に新しい。 そのため、本研究では、四国の被災道路での給油スタンドや一次集積所に於ける仕分け作業の停滞に、待ち行列を適用し、交通渋滞を避けながら待ち時間の短縮を図り、支援物資配送の最適経路を求める数式モデルを作成した。この成果は、将来起こりうる様々な大規模災害時の緊急支援物資の効率的配送計画に有効な手段となることが期待される。今後はGPSによる渋滞情報をモデルに組み込み、道路渋滞を極力回避し、災害時に於ける機動的に使用可能な手段を開発する予定である。
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