研究課題/領域番号 |
26560169
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
片岡 俊一 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60333712)
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研究分担者 |
山本 英和 岩手大学, 工学部, 准教授 (00250639)
松冨 英夫 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20134083)
渡辺 一也 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50463097)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オンサイト予測 / 地殻変動 / 長周期地震動 / レイリー波 / 最大変位 / 津波シミュレーション |
研究実績の概要 |
経験的なモデルを組み合わせることで,地震に伴う地殻変動(地震動を含む,以下断らずに同様に用いる)から津波高さを推定することが可能であることが示せた.このことは,本課題の前提に科学的な裏付けを与えたものと考えている.また,その導出過程における考察から,地殻変動については鉛直方向でなく,水平方向を用いる方が望ましいことが分かった.そこで,2011年東北地方太平洋沖地震だけではなく,2003年十勝沖地震についても水平方向の地殻変動データを収集した. 地殻変動と津波高さの関係について精査したところ,観測された津波高さは沿岸にある海岸構造物の影響を強く受けている可能性があることが分かった.また,陸上の津波高さだけではなく,潮位変動データについても計測機器の特性の問題があることが分かった. 地震加速度記録から地殻変動量を安定的に求める方法に関して実験的検討を行った.主たる実験は地震計そのものを数十cmから1m程度一方向に変位させるものである.実験の結果,加速度記録を二回積分して得られる変位がしばしば発散することの原因は,長周期ノイズと回転動が主たるものであり,積分方法には問題がないことが分かった.また,回転動の影響が少ない実験結果では,単純に積分するだけで残留変位が得られることが分かった. 沿岸域の地殻変動などのデータから津波高さが推定された場合に,湾内の津波高さを推定する必要が出てくる.これについては,昨年度提示した,湾口に島嶼を有する湾の湾内における津波高の概算法が適用できると思われる.そこで,今年度は実用性の観点からこの概算手法に検討を加えた.具体的には,島嶼域の開口幅に対する外海域の検討対象幅比が概算値に与える影響を検討するとともに,概算法を島嶼と見なせる釜石湾口防波堤と大船渡湾口防波堤へ適当し,その適用度を論じた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画調書では,数値シミュレーションを介した地殻変動量と津波高さとの研究および地震加速度記録から地殻変動量を安定的に求める方法に関する研究を目的として挙げていた.このうち,東北地方の太平洋沖合で起きる地震による津波シミュレーションは既に終了している.しかしながら,津波高さと地殻変動の関係について整理が終わっていない.本来ならば,いくつかの地震については,今年度中に整理が終了する予定であったが,この点が遅れている.ただし,整理をすることが本課題の一つであったので,期間終了時には当初予定を達成できるものと考えている. 一方,地震加速度記録から地殻変動量を安定的に求める方法に関しては,順調に推移しているが,いくつかの追加実験が必要であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的として挙げたもののうち,地殻変動量と津波高さとの関係については,数値シミュレーション結果は得られたので,今年度中に両者の関係を明確にする.さらに,数値シミュレーションに用いた断層モデルを利用して,地震動を計算し,地震動最大振幅と津波高さとの関係も検討する.これらについては,今年度の前半中に作業を進め,後半はまとめの作業に入りたい. 地震加速度記録から地殻変動量を安定的に求める方法に関しては,現状をまとめるとともに,追加実験を行う.また,最近GNSSと加速度計を組み合わせた地震計が発売されたが,この地震計の機能は本研究課題に非常に適合している.そこで,性能評価の実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた現地調査が順調に進み,旅費の使用額が予算以下となった.
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度の旅費と併せて,有益な研究交流を行う予定にしている.
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