研究課題/領域番号 |
26560172
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
井上 征矢 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80389717)
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研究分担者 |
丸山 岳彦 専修大学, 文学部, 准教授 (90392539)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / 電光文字表示器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電光文字表示器でスクロール表示される文章を、聴覚障害者にとって分かりやすく、かつ誰もが文意を速く把握できるように書き換える方法を探ることである。 平成28年度は、昨年度に検討した書き換え方法(語順の入れ替え、表現の書き換え、情報の省略と強調、など)の有効性を探る実験を継続し、被験者(聴覚障害者学生)を増やして(計26名、一部の表示文は20名)分析を行った。実験では、交通施設で表示されているダイヤの乱れに関する案内を取り上げ、現状の形の表示文20文と、それらを書き換えた20文をスクロール表示し、読解後に表示内容を問う質問(選択式、4択)を行い、両者の正答率を比較した。その結果、現状の形の文章に比べて書き換え文の平均正答率が有意に高くなった。また、誤答の内容に注目して分析したところ、語順を入れ替えて主語(路線名)と述語(運転状況)を近づけることによって(例: 「○○線は、○○の影響で、遅れがでています」→「○○の影響で、○○線は遅れがでています」)、主語が異なる選択肢の選択が有意な差ではないものの減少し、(運転を)「見合わせている」を「中止している」と、より直接的な表現に書き換えることで、運転状況が異なる選択肢の選択が有意に減少するなど、一定の効果が期待される結果が得られた。 しかしこの実験では、語順や表現など、複数の書き換えを1文の中で同時に行ったため、書き換え方法ごとの効果を特定できたわけではなかった。また正答率が向上しなかった書き換え文も一部にみられ、その原因の検討も必要となった。そのため次に、書き換え方法ごとに現状の形の文章とその書き換え文の組を新たに作文し(計18組、36文)、上記の実験で得た傾向をより詳細に分析するための追加実験を行うこととした。平成28年度末までの被験者は17名であり、平成29年度にも継続して行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の主な課題は、前年度に検討した、スクロール表示される文章を聴覚障害者にとって分かりやすく書き換える方法(案)の有効性を探る実験を継続し、分析を行うことと、その効果的な表示方法(表示速度、文字色など)を検討することであった。 前者の実験と分析については、予定通りに進めることできた。しかし、実験結果から各書き換え方法の有効性を検討するにあたり、実験で使用する文章を増やして、より詳細に分析する必要性が生まれたため、追加の実験を行うこととなり、後者の課題については実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度より実施している、各書き換え方法の効果を検証する追加実験を継続し、被験者を増やしてより詳細な分析を行う。 そして最後に、研究の総括として、公共空間(交通関連施設)における電光文字表示器でスクロール表示される文章を、聴覚障害者にとって分かりやすく、かつ誰もが文意を速く把握できるように書き換える方法の指針をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に追加実験を継続することになり、実験協力者への謝金や結果の発表費・旅費等が必要となったため、当初計画ではアルバイトを雇う予定であった、実験装置の作成やオペレーション、入力作業などを自ら行い、研究経費を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度未使用分は平成29年度に、実験協力者への謝金、研究補助者のアルバイト代、関連書籍の購入費、研究成果の発表費、研究打ち合わせや研究成果の発表に要する旅費、研究記録等の作成・保存のための消耗品の購入費等として使用する計画である。
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