船舶内で発生した火災火源上に形成される火災プルームは,気象・海象条件により船舶特有の動揺・傾斜等の影響により火源位置の時間的な変化および船体動揺に起因する慣性力の影響を受ける。そこで本研究は,火源位置が時間的に変化する条件下の火災プルーム性状を明らかにすることを目的として模型実験を実施し,既存の固定火源上のプルーム軸に沿った温度減衰予測式と比較した結果,以下の事項が明らかとなった。 (1)実測値との比較から,火源の移動により生じる横風の影響が小さいとみなせる条件下においてガウス分布を仮定した既存の点火源上の軸対象プルームの関係式を用いて,ゆっくりと水平に単振動する火源(仮想矩形火源)の中心軸を通り長辺に平行な鉛直平面上の温度場を予測できることを確認した。 (2)測定した各高さを通過するプルームの特性温度上昇(水平分布をトップハット型と近似して算出した温度上昇)の高さ方向への減衰性状を調べたところ,仮想矩形火源の両端近傍にそれぞれ極大値を示す水平温度分布が観察される火源近傍領域から, 2つのプルームが合流し1つの極大値を有する水平温度分布を示す領域までは,2次元プルームの軸上温度性状を示すことが明らかとなった。さらにより上方へ遠ざかり,仮想矩形火源の形状を無視できる高さまで上昇した場合には,点火源上の軸対称プルームに近い温度性状に変化することが明らかとなった。 (3)2次元プルームから軸対称プルームへと温度性状が変化する高さは,火源の代表径,振幅および発熱速度の関数として表現できる。 (4)火源が時間的に移動するため仮想矩形火源上の特性温度上昇は,常時火炎が存在する矩形火源の温度上昇よりも低い。しかし,振幅および周期の変動を考慮した見かけの発熱速度を導入することで,常時火炎が存在する矩形火源上の火災プルームに関する既存式を利用できる。この変換係数は,振幅と周期の関数として表現できる。
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