本研究の目的は,(1)コンクリート表面にあるき裂幅からき裂深さを推定し,画像解析手法を用いてコンクリート内部の欠陥を診断すること,(2)UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機(マルチコプター))を用いて実在するRC構造物を調査し,得られた画像からアルカリ骨材反応,塩害,凍害の分類と損傷レベルの判定を行うことにより,(3)RC構造物の長寿命化に資する簡易システムを構築することを目的としている. 平成26年度の研究成果として,(1)および(2)について取り組んだ.(1)き裂深さの推定については超音波測定器(東横エルメス社製エルソニックSP・ESI/P-10S)を導入し,深さの推定精度として,き裂深さが5cm以内であれば平均で±3mm程度であることが求められた.なお,き裂は福井高専所有の連立試験機や疲労試験機によりRC梁供試体にき裂を生じさせたが,鉄筋やスターラップがある梁においてもき裂深さの推定が可能であることが判った.また,UAVを用いた橋梁点検では,上向き撮影用のカメラジンバルを準備し,福井県鯖江市にかかるA橋について調査した.その結果,点検項目(40項目)に対する目視結果と比較して,約3分の2程度の項目はUAVを用いて損傷の判断が可能であることが示された. 平成27年度は,上記の(3)RC構造物の長寿命化に資する簡易システムの構築として,福井県にかかる15m以上の橋梁について,点検結果を格納する地理情報システム(GIS)を整備した.橋梁の位置にポイントデータを作成し,属性データとして,橋梁の基本情報に加えて点検項目を入力できるシステムを構築した.今後も,位置情報と損傷理由との関連を調査すること,UAVによる橋梁点検を継続的に実施していく予定である.
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