研究課題/領域番号 |
26560182
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中井 正一 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90292664)
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研究分担者 |
関口 徹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50451753)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液状化 / 地下水位低下 / 地下水位回復 / 不飽和化 / 飽和度 / P波速度 |
研究実績の概要 |
東北地方太平洋沖地震では、首都圏東部の広い範囲で液状化が発生し、大きな被害を生じた。本研究は、地下水位を一旦低下させた後、水位が回復するに任せるだけという極めて単純な方法により地盤を不飽和化させ、液状化抑止効果を得ようとする方法の定量的評価を目的としている。具体的には、遠心模型実験および現場計測により、P波速度(Vp)や飽和度を計測することにより不飽和化の成否および評価指標を確認する。 平成26年度当初の研究計画では、[A]遠心実験用Vp・Vsセンサーの開発、[B]遠心模型実験による地下水位低下回復によるVpおよび飽和度の計測確認、[C]現場実験による飽和度の確認、の3点を予定した。 このうち、[A]については、Vpを計測するためのセンサーを試作し、遠心実験でVpが計測できることを確認した。[B]については、まず、遠心載荷中に模型地盤の地下水位を低下・回復させるための装置を開発し、ついで、これを用いて地下水位低下・回復・震動実験を行った。また、[A]で開発したVpセンサーと誘電率計を用い、一連の過程でVpおよび飽和度の計測を行った。[C]については、千葉市が実施した実証実験に参画し、地下水位低下後および回復後のVpおよび飽和度の計測を行った。 一連の研究により、地下水位低下回復後も対象地盤の飽和度は完全飽和に戻らないこと、PS検層によるVpの評価には難のあること等が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要は、前記のとおりである。 [A]Vp・Vsセンサーの開発:従来の研究で試作したドラム型のVp・Vsセンサーを再度製作し、予備的な遠心模型実験によりVpが計測できることを確認した。なお、以降の実験にでは、Vsは計測せず、Vpのみ計測を行っている。 [B]遠心模型実験による不飽和化地盤の評価:遠心載荷装置で30gの遠心力をかけ続け、地下水位を初期状態から一旦低下させ、しばらくおいて回復させ、その後に震動を加えるという実験を、パラメータを変化させながら5ケース実施した。いずれも、地下水位変動履歴を受けた地盤の飽和度は90~95%程度となり、液状化抑止効果を発揮することが確認できた。ただし、今回の実験では、Vpによる飽和・不飽和の判断は可能であったが、飽和度の評価指標としての適否を判断するには至らなかった。 [C]現場計測:千葉市が美浜区で実施した地下水位低下実証実験に参画し、地下水位低下中および回復後にPS検層およびRIコーン試験を実施し、Vpおよび含水比(これより飽和度を計算)を求めた。それによれば、地下水位変動履歴を受けた砂質地盤ではVpは大きな値を維持し、また、飽和度も完全飽和には戻らないことが実地盤においても確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成26年度)は概ね計画通り研究を進めることができた。ただ、Vpを飽和度の評価指標として用いるには更なる検討が必要であることが分かった。これを踏まえて、今年度は以下の検討を行う(おおよそ当初計画に沿った内容である)。 [B2]遠心模型実験による不飽和化地盤の評価:遠心載荷装置で30gの遠心力をかけ続け、地下水位を初期状態から一旦低下させ、しばらくおいて回復させ、その後に震動を加えるという実験を継続する。前年度の実験結果を詳細に吟味し、新たな実験パラメータを設定するものとする。引き続きVpセンサーおよび誘電率計を使用し、Vpの飽和度評価指標としての成立性を検討する。 [C2]現場計測:千葉市が実施した実証実験はすでに終了しているが、地下水位回復後の経時変化を観測する。方法は、地盤調査もしくは微動アレイ観測によるものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、遠心模型実験装置部品(水タンク)の製作、および、実証実験現場での地盤調査(PS検層等)が見積額と多少前後したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
第2年度(平成27年度)の研究費使用計画は概ね当初計画通りの予定である。内容は以下の通りである。 遠心模型実験に用いる砂、水圧計、加速度計、Vpセンサー、誘電率計などは消耗品であるため、適宜交換する。 現場実験として、PS検層を実施する場合は専門業者に委託する。微動アレイ観測は研究代表者・分担者が所有する機器を使用するが、ケーブルなどの消耗品は必要となる。
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