本研究の目的は、電磁気学的アプローチにより地震の前兆を地震発生の数週間程度前に捉えることである。地震の直前に地殻の圧力変動により、地表面に現れた電荷によって表面プラズマ波が励起される。そのとき励起された表面プラズマ波とラジオ波が結合することによりFMラジオ波が増強され、その結果見通し外伝搬が起こると考えられる。そこで、日本全国のFM放送局から30数局をピックアップし、これらのFM放送波の受信波を観測するシステムを構築した。 このシステムを構築後、約2年間のFM放送波の受信強度データを蓄積した。蓄積したデータから地震に先行する明らかな前兆的電磁現象は見いだせなかったが、地震に伴うと思われる電磁的ノイズの増加がいくつも確認された。今後、このことについてより詳細に統計的解析を実施する予定である。 また、地表面プラズマ波の伝搬解析として、2次元の平地モデルの伝搬解析と、山岳の地形を模した円錐モデルを用いた3次元の伝搬解析を行った。2次元平地モデルで、地表面にプラズマがある時と無い時で解析を行い比較した結果、地表面にプラズマが出現している時の方が信号源からより遠くまで信号が伝搬し、地表面により強い電磁界が現れることが分かった。また円錐モデルを用いて解析を行った結果、円錐モデルの表面のうち信号源に面していない側面においては、円錐モデルにプラズマが出現している時の方が出現していない時と比べて、電界強度が強く現れることがわかった。以上のことにより、表面プラズマ波により、信号がより遠くまで伝搬することがシミュレーションにより明らかになった。
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