研究課題/領域番号 |
26560185
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 素之 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (00304494)
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研究分担者 |
金折 裕司 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60194883) [辞退]
進士 正人 山口大学, 理工学研究科, 教授 (40335766)
楮原 京子 山口大学, 教育学部, 講師 (10510232)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土石流 / 年代測定 / 歴史資料 / 発生履歴 / 洪水 |
研究実績の概要 |
本年度は、防府市石原地区において土石流発生年代と洪水発生年代を解明するためにジオスライサーを用いた堆積物の構成・層序・物性の把握、堆積物に含まれる炭化物の採取とその年代測定(放射性炭素年代測定法:14C法)を実施した。また、歴史資料から整理した被災情報と取得した年代測定結果を照合し、土砂災害イベントの確度の検証を進めた。本地区の小規模扇状地の2 箇所でロングジオスライサー(以下、LGS と略記)を用いて地層採取を実施し、植物起源の炭化物を採取することができた。LGS は幅0.4m,長さ4mであり、ハンディタイプのものと比べて長く,幅の広い試料を採取することができる。また,ジオスライサーの地盤への圧入には重機に取り付けた振動機を使用するため、より深部の地層を剥ぎ取ることが可能である。今回得られた年代測定結果は、『山口県災異誌』『防府市史』等に記載されている災害記録と照合し、土石流および洪水発生頻度の評価を行った。本年度得られたデータとこれまでに取得したデータを整理して、土砂災害発生年表にまとめた。その結果,土石流は過去9 回以上発生していたことがわかった。特に、土石流堆積物は1200 年頃から1500 年頃の間に集中して存在し,また河川堆積物は西暦700 年頃から1400年頃の間に複数存在することが確認された。また、今回採取したLGS の試料は概ね河川堆積物主体であったが,河川堆積物に挟まれた土石流堆積物も確認された。現時点の研究成果をまとめると、次の通りである。(1)石原地区の下流部には河川堆積物が分布しており、河川の氾濫による堆積物の供給が推測された。(2)石原地区では、2009 年防府災害を含めると過去4 回の土石流が発生し、13~15 世紀では100 年程度の間隔であった。(3)上記の結果は、これまでの研究成果と整合していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画では、(1)歴史資料による被災情報の集約および人文地理学的検討、(2)その他として社会的変化に応じた防府平野および周辺山地の自然環境・土地利用の変化、年代測定結果と周辺の土の風化指標の相関の検討を掲げた。 (1)に関しては、年代測定結果の比較・検証のために、山口県に残存する古文書・地誌における風水害、震害等を検索・収集し、災害年表として整理した。 (2)に関しては、ジオスライサーによる柱状試料の分析結果をもとに土石流・洪水の発生頻度の観点から防府平野の成り立ちを検討した。また、堆積物から炭化物を採取し、年代測定を行うとともに、土試料に対して物理試験を行い、土石流堆積物と河川性、湖沼性堆積物の物理特性の違いを検討した。 以上のことから、平成27年度の実施項目のいずれも遂行し、その結果を概ね取得したことから、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
年代測定結果と歴史資料に基づいて作成した「防府地区土砂災害発生年表」に洪水履歴を反映し、土砂・水害発生年表に進化させる。特に、現年表における『データ空白域』に対して重点的に年代測定を実施し、その結果を歴史資料にみられる災害記事と照合する。また、新たな歴史資料の発見にも努める。これにより、防府地区における過去1000年間程度の土砂・水災害史の大要を把握できると考えている。以上の結果をもとに、土砂災害の発生頻度と影響範囲によって長期的な被災リスクを評価・判定する方法について検討する。
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