研究実績の概要 |
断層粘土(ガウジ)の特性として、通常の地質材料とは異なる性質がいくつかある。それは力学的、物理学的、化学的なものであるが、それらの特異な性質は非常に細粒な粒状物質を含み粒径分布が広範であることに由来する。これらの性質の中で、特に重要なことはせん断を受けたときに電気的に分極する(SIP, Shear-induced Polarization)という事実である。この事実を体系的に記述した例は国内外を問わず未だない。粘土供試体表面の電荷分布が一見大変複雑な様相を示すからで、複雑性はSIPの発生メカニズムに起因していると見られる。 粘土粒子間において電気化学作用が働くが、電荷の分布は鉱物結晶表面の電荷の状態、間隙水の電解質の種類と濃度および粒子間距離でほぼ決定される。間隙水中のイオン濃度は粒子間の相対距離に依存し、且つイオンの拡散は瞬時ではないため、電荷分布の状態は時間と共に変化することになる。したがって、整形による供試体表面の擾乱は局所的ひずみ分布を反映するため、空間的時間的に複雑な様相を示すと考えられる。この仮説は整形後のガウジ試料に現れる電荷分布の観測から類推できる。一方、屋外における自然電位観測においても同様に、電極設置直後は激しい電位変化がみられ、ある程度の時間が経過すると一定値に落ち着く。この事実は電極の埋設時に周縁部の土が局部的に激しく擾乱を受け、SIP効果によって擾乱に応じた電位変化が観測されたものと見られる。これらの特異な電位変化を詳細に検討した。今回の研究では、愛媛県大洲市内の豊茂地内の地すべり地において、自然電位の観測と電気探査を主体とした地盤調査を実施した。 自然電位観測では測線長120mにおいて、12本の電極の埋設とケーブルの敷設を行い、信号増幅ならびにフィルタリング後、それぞれの電位記録を収録し、テレメータシステムによるデータ転送が可能となるようにした。
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