本研究は,これまでにほとんど研究のなされていない,水底地すべりの発見と地すべりの形態をあきらかにしようという取り組みである.そのために,軽量安価な無人調査船艇を作成し,汎用型の音響調査船を作成することを第一目標とし,それを用いて,湖底地すべりを中心に探索することを第二目標とした. 本年度は,これまでの研究の取りまとめを行うとともに,今後の研究を推進するために装置類の改良を行った.また,猪苗代湖および,芦ノ湖で探査を行った.装置類は,より遠隔地や僻地での使用を想定した分離型フロート船体および安定した遠隔無線システムの作成を行った.本年度はこれらのテストを行うとともに,現在国際誌への論文を投稿中である. 芦ノ湖および猪苗代湖では発見された湖底地すべり地形において,水中カメラ探査を行うとともに,チャープ式音響地層探査装置において,表層地質構造の取得を行った.芦ノ湖では,一部しか音響地質構造を取得することはできなかったが,水中カメラにより,水底地すべりにより運ばれてきたことを強く示唆する水中林の様子を観察することができた.さらに,魚群探知機の機能を応用し,底質分析を行うことに成功した.これらにより,水底地すべりとそれ以外の底質を判別することができるようになった.猪苗代湖では,沿岸域に複数の大規模地すべりが存在していることが明らかになった.そのうちの一つは総面積が約9キロ平方メートルに達するこれまでに確認できていない大規模のものであることが判明した.
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