本研究では,現実的な計算コストで小隕石落下時の地表被害範囲を予測するために,小隕石に対して大きな計算格子(セル)を用いても解析可能な小隕石モデルを構築した.さらに,より実現象に即した解析を行うために鉛直方向の大気モデルを構築,導入した.また,この解析手法を用いて,小隕石の速度・角度を変えながら様々な条件下で解析を行い,地表面の加圧範囲について調査した. 混相流解析に用いられるモデルを基に,小隕石モデルを構築し検証を行った.ここでは,小隕石の速度履歴を確認することによって,小隕石モデルの妥当性を評価できた.また,より実現象に即した解析を行うため,鉛直方向の大気モデルを構築し検証を行った.その結果,高度30kmまでの密度・圧力・温度の分布と地表面圧力を,時間経過後も維持できることが確認できた.さらに計算条件について評価を行った.計算格子の形状・サイズについて評価した結果,本研究に対しては一辺0:25kmのプリズム格子が妥当であることを確認できた. 新たに導入した大気モデルの必要性を確認するため,大気分布の有無で地表面の加圧範囲を比較した.その結果,大気分布の有無により圧力値が大きく異なることが分かり,大気分布の必要性が高いことが示された.小隕石の初期速度・角度を変えた様々な条件下で地表面の加圧範囲を計算した.その結果,条件ごとに異なる加圧範囲,また衝撃波の3次元的構造を確認することができた.また,上空で発生した衝撃波の伝播に影響を与えうる条件の一つとして挙げられる,対流圏の乱流効果について,乱流域を通過する低周波音波の振幅変化の理論解を用いて評価した.その結果,対流圏の乱流効果は衝撃波波形の構造に大きな影響を与えないことが示された. したがって、本研究で構築した解析モデルは,小隕石突入に伴い発生する衝撃波被害範囲予測に対し有用な技術であるといえる.
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