最終年度であるため、研究報告を兼ねて「埋もれた都の防災学」(京都大学学術出版会)を刊行した。本書は、ローマ、古墳、湖底遺跡、京都東山、天井川、近世都市、近現代都市の7つの章によって構成される。多少前後した部分はあるが、ほぼ年代順に地盤に関する災害と人間の関係を述べている。行く川の流れが絶えないように、地盤の歴史と人間の歴史は繋がっている。さらに、地盤災害は、土地と人間の歴史性を反映する今日的課題である。その事を、開発による災害リスクの発生過程を中心に、いくつかの事例を題材に述べた。防災の本質は、「自然とどの様に折り合いを付けるか」である。その答えは、歴史の中にも見いだすことが出来るに違いない。本書は、アジアモンスーン気候下の島弧変動帯という、世界で最も過酷な自然条件のなかで、日本人がどのように鍛えられてきたのか、その事跡を収集して日本人と災害の関係を探ろうとする試みでもある。本の扉には次の様に紹介文が書かれている、「半分だけ倒壊したコロッセオ,大阪城の堀跡に生じた凹み,年々高さを増す天井川……。これらはいずれも,“やり過ぎてしまった”開発に対する自然からの反撃である。地下に埋もれた災害の痕跡は,人々がその地で自然と対峙してきた歴史を伝え,現代に続く災害リスクを教えてくれる。私達の暮らす町の下には,どのような歴史が眠っているのだろうか? 地盤災害と人間の関係を探る防災考古学への招待」。本書の書評は、毎日新聞、建設流通新聞、しんぶん赤旗、月刊地理に掲載された。
|