研究実績の概要 |
積雪の比表面積(SSA)は粒子の形状や大きさだけではなく粒子間の結合状態を表す物理量であるため,アルベドや積雪内部の物質移動のモデルの精緻化には必要不可欠な情報であるが, その測定方法は乾いた雪に限定されている. そのため融雪期の積雪や温暖地方の積雪のような濡れた雪(濡れ雪)でのSSA測定は不可能であった. そこで本研究では, 水と氷における近赤外域の光の吸収割合が波長依存性することに着目し, 人工的に作成した含水率が既知の積雪サンプルにおいて, 複数の近赤外領域の波長(900nm, 1050nm, 1150nm, 1290nm)の反射率(NIR)を測定することで, 濡れ雪の物性値(密度, 含水率, 粒径等)とNIRの関係を実験的に明らかにした. またその結果を基に非接触で積雪のSSAを測定できる装置(光学的積雪比表面積測定装置)を試作し, その精度評価を行った. さらに従来は乾き雪のSSAの測定にのみ適用されていたガス吸着法(BET法)を, 濡れ雪に適用するための改良を行うとともに実際に濡れ雪のSSAの測定を行い, BET法によって液体水部分のSSA減少効果を定量的に評価できることを明らかにした. また従来測定が難しかった降雪直後のSSAを改良したBET法で測定することで, 降雪粒子の種類とその降雪粒子の持つSSAには対応があることを明らかにし, 降雪粒子が原因となる表層雪崩の弱層をSSAという物理パラメータで表現するための道筋を作った.
|