実環境下の流体環境が精子運動に与える影響の解明を目的として,様々な粘度特性をもつ試薬内におけるウシ精子の運動のPTV解析,およびPIV解析による精子鞭毛まわりの流れの可視化を行った.実験の結果,ニュートン流体中では粘度増加に伴い精子速度,直進性が低下した.一方で,高粘度非ニュートン流体中では,同程度の粘度域のニュートン流体中に比べ,鞭毛形状,特に局所的な曲率に大きな相違が見られ,結果として,直進性,振動数が大幅に増加した.したがって,これまで観察されている希釈した溶液内での精子運動とは異なり,実際の卵管粘液内における精子は直線的に運動し,より効率的に卵子へ向かうことが示唆される.
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