研究課題/領域番号 |
26560207
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長山 和亮 茨城大学, 工学部, 教授 (10359763)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 生体・情報計測 / 細胞核 / 細胞骨格 / メカノトランスダクション |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞核の形や核に加わる力・ひずみを操作したり,核内のDNAの分布を直接操作することで,細胞の機能をどこまで制御できるか,その可能性を追求することを目的としている. 平成26年度は,微細加工技術で作製した特殊な基板上で細胞を培養し,細胞内の核を変形させるといった手法に着手した.すなわち,シリコーンゴムの一種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて直径3um,高さ10um程の微細な円柱(マイクロピラー)が多数配列した基板を作製した.このマイクロピラー全面に細胞接着タンパク質を塗布した状態で細胞を培養すると,細胞がピラー間に侵入し,それに伴って細胞内の核をピラーで挟み込んで局所的に変形を加えることができた.この手法を用いて健全な組織から単離された血管平滑筋細胞を培養したところ,核の表面がアクチン細胞骨格に取り囲まれながらピラーに沿って大きく変形した.興味深いことに,このような環境下では,本来は細胞が盛んに増殖する血清入り培地中においても細胞の増殖が顕著に抑えられた.また,同時に細胞の運動速度も顕著に抑えられた,特に,ピラーに挟まれ核が顕著に変形した部位では,核膜のラミンタンパク質層が大きく変形しており,核内のDNAが凝集している様子が多く観察された.このことからも,マイクロピラーで核に局所的な変形を加えることで,核内での転写活性や細胞周期へなんらかの影響を与えることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定どおり,微細加工を施した微細凹凸基板上で細胞を培養することで,細胞内の核に変形を加え拘束する手法を確立した.さらに,この実験系で正常細胞への影響を調査したところ,本来は細胞が盛んに増殖する血清入り培地中においても細胞の増殖が顕著に抑えらるといった興味深い結果が世界で初めて得られた.この成果は,第54回日本生体医工学会大会にて発表され,さらにJournal of Biomechanics 誌に論文投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後,さらに核内DNAの転写活性や,細胞周期の変化に注目すると共に,細胞種によって細胞核へのどのような力学刺激負荷法が有効であるか,検討していく.このようにして,核への力学刺激によって,細胞の機能を制御する技術の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入の際に,消費税を考慮しながら購入を進めてきたが,最終的には500円未満の端数残額が生じた.残額は500円未満であるので,研究は当初の計画通り進めることができていると言える.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の消耗品費用の一部として使用する.
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