研究課題
体細胞クローン産子においては、ドナー細胞由来のmtDNAは消失し、ほぼレシピエント卵子由来となる。すなわち、ドナーとクローン産子のmtDNA型が一致しないこととなる。近年、わずかなmtDNAの突然変異により、宿主の自然免疫系による選択的排除の発生が報告された。腎臓のような複雑な構造を持つ臓器を、体細胞クローン動物から体細胞を提供したドナーへ移植した報告はなく、ドナーと異なるmtDNAの影響は不明である。本研究は、体細胞クローンネコの腎臓を取り出し体細胞提供ネコであるドナーに移植し、移植臓器の細胞中に混在するミトコンドリアDNA(mtDNA)による影響(拒絶反応)を評価することを目的としている。これまでに、1、移植後の拒絶反応評価として、同じ個体への腎摘出後の再移植による腎組織への影響を調べた。再移植直後の腎機能は低下したが、1週間後には摘出再移植腎機能の回復を確認できた。2、mtDNA比の違いによる胚発育の検討として、レシピエント細胞質とドナー培養細胞由来のミトコンドリアが全く異なる異種間での再構築胚において化学的処置による同期化は効果がないことを明らかにしたほか、ウシ卵母細胞を用いた異種間での体細胞クローン胚に観察されるTSAの効果がブタ卵母細胞において認められず、TSA処理効果はレシピエント卵子の品種間により異なることを明らかにした。本年度までに29頭の受胚雌ネコに体細胞クローン胚(40-50個/頭)を移植した結果、1頭妊娠したが流産したため、ドナー腎臓を得ることができなかった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件)
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