研究課題/領域番号 |
26560217
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白木川 奈菜 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90724386)
|
研究分担者 |
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
井嶋 博之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10274515)
調 憲 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70264025)
山下 洋市 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (00404070)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 人工胆管 / 医工連携 / 生体適合性材料 |
研究実績の概要 |
重篤な肝不全の場合、根本的な治療法は肝移植しかない。しかし、肝移植は心臓死ドナーからの移植が行えない。そのため、脳死もしくは生体部分肝移植が行われている。生体肝移植は肝静脈、門脈、動脈を再建した後に、胆管を再建する。しかし術後の胆管狭窄を伴う腸管からの逆行性胆管炎発症による入退院の繰り返しが、患者及びレシピエントの社会復帰を妨げている。 再建部位の選択の自由を広げ、かつ術後の狭窄を防ぐために強度を持ちつつも、生体適合性の高い人工胆管の開発が医療現場では希求されているしかしながら、胆管に関する研究者は少なく、理想的な素材はまだ開発されていない。そこで、我々はその開発に取り組んでいる。 具体的には、機能性材料による紐状のゲル(ゲルストランド)の開発を行い、開発したゲルストランドの編織により管を作製し、体内でレシピエントの胆管に置換されるような人工胆管の開発である。本研究は平成26~28年度にかけて行われている。 平成26年度にはグルコマンナンゲルによるゲルストランド(直径 2 mm)を作製し、その編織により管状構造体(管壁厚さ 3 mm)を作製したが、臨床やブタでの胆管を想定すると、ゲルストランドをさらに細くし、管壁厚さを薄くする必要が示唆された。 平成27年度はゲルストランドを細くする試みと、作製した管の細胞置換を促進すべく、細胞遊走性の促進及びその評価系の構築、さらにブタ胆汁の採取及びそれを用いた胆汁環境下での安定性評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の平成27年度の計画では、編織により作製した管内壁への細胞播種、編織によるゲル強度の変化の評価、胆汁環境下における作製したゲルの安定性評価、の3項目を予定していた。 予定通り、胆汁環境下でのゲルの評価を進め、さらには当初の予定では組込んでいなかった組織置換促進への取り組みを進めている。一方で、本研究の核であるゲルストランドの作製及びその編織について、改良があまり進んでいない。そのため、やや遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は生体適合性材料の編織による強度と生体適合性を両立した人工胆管の開発である。生体適合性材料として、弾力を有するグルコマンナンに着目し、そのゲルを編織することで、人工胆管の開発を目指してきたが、ゲルを編織するためには、ゲル通しの滑りが良い中で、編みこんでいく必要があり、予想以上に困難であった。そこで、この課題を克服するために、ゲルの軸として縫合糸をベースとしたゲルストランドの作製や、編織後に凍結乾燥することによる管の薄層化に取り組む。 その一方で、ゲルの素材について、移植時にレシピエントの胆管に置換されるよう改良を進めたい。
|