研究実績の概要 |
細胞表面に存在するタンパク質は細胞間の認識や相互作用に重要であるだけでなく、細胞の種類や状態を知るための重要な指標として、血球細胞などの分化や幹細胞の品質の確認、あるいはフローサイトメトリーなどによる特定の細胞の分離の手段としても使われている。。我々は、より効率良く細胞表面タンパク質を同定する方法として、まず細胞表面をビオチンタグで化学修飾し、アビジンカラムによって回収して同定する方法を報告したが(Nunomura, Mol Cell Proteomics, 2005)、この方法は試料調製のための手順が比較的複雑で汎用性が乏しい欠点があった。そこで本研究では、現在までに知られているほとんどの細胞表面タンパク質がN型糖鎖をもつ糖タンパク質であるという点に着目し(Kaji, Mol Cell Proteomics, 2007)、SDS-PAGEによってタンパク質を分画したゲルを短冊状に切り出した後に、ペプチドをゲル内消化によって抽出して(Taoka, J proteome Res, 2015)、得られた全ての分画を酸性条件での順相クロマトグラフィーによって精製し、さらにIGOT法と組み合わせることで細胞表面タンパク質を糖ペプチドとして回収して同定する方法を開発した。この方法をマウスES細胞やヒトiPS細胞に適用したところ10cmディッシュ1枚で培養した10の6乗個程度の細胞から調製した抽出液(~500μgタンパク質)から1000種類を超えるN型糖ペプチドに由来する約800種類のタンパク質が同定され、その約9割が細胞表面タンパク質であることがわかった。今後この方法は、安定同位体を利用した細胞標識法などと組み合わせることで、幹細胞を含む各種の細胞の分化の状態や、その異常を検出するための細胞表面マーカーの検索や同定などの様々な目的に広範に利用できると考えられる。
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