研究課題/領域番号 |
26560222
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮田 昌悟 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70376515)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 毛包再生 / マイクロインジェクション / 生体外再生 / 多層ビーズ |
研究実績の概要 |
本研究は毛髪の全ての再生過程を生体外にて完了する「完全生体外での毛髪再生」を実現することを目的としている. 本年度は完全生体外における毛髪再生のための基盤技術として,複数種の細胞を含有するゲルビーズの作製技術を確立した.具体的にはマイクロインジェクション法を応用した多階層構造をなす細胞包含ゲルのマイクロスポッティング手法を開発した.この手法を用いて,第1層である中核にマウス由来のES細胞を,第2層である表層にマウス胎児由来の表皮細胞層を配したゲルビーズを構築し,生体外で4週間培養を行った.また,培養後に試料に対して組織学的評価を実施した.その結果,培養された細胞含有ゲルビーズ中には皮膚付属器に相当する器官を認め,皮膚の高次構造が生体外にて再構築可能であることを明らかにしている.. さらに,研究の次の段階として,生理活性物質の拡散方向を制御可能とするように培養体の構造を改良することで,中心にケラチン染色性を呈す毛包様の器官再生を認めた.これは現在までに報告例がない毛髪組織の完全生体外再生の可能性を示唆するものである. 以上,本年度の研究では複数種の細胞を含有するゲルビーズ作製技術を開発することで,生体内の毛包における細胞配置を生体外にて再現することを可能とした.加えて,生理活性物質の拡散性を制御することで毛包様組織を生体外で再生することにも成功している.生体外において組織学的に毛包と判断可能な組織再生はこれまでに例がなく,今後,培養条件,ゲルビーズ構造の検討を進めることで完全生体外での毛髪再生を実現する計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初の計画では,温度感応性基材とマイクロインジェクション技術を復号化した多層構造を成す細胞含有ゲルビーズの作製技術を開発することが主たる実施内容であった.しかしながら,確立されたマイクロインジェクション装置の精度が当初の想定を上回ったためにインジェクション技術のみで目的とする細胞含有ゲルビーズの作製が可能となった.さらに,研究を実施する過程で拡散性の制御技術を組み合わせるという新規な着想に至り,これを応用することで生体外での毛包再生に成功したため.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究成果から多層構造のゲルビーズと生理活性物質の拡散方向の制御が生体外における毛包再生の重要な要素であることが明らかとなっている.本年度は,同要素を詳細に検討することで生体外における毛髪再生に必要な培養環境を探索することを目的とする.具体的には,生理活性物質の拡散性を制御可能で,かつ,複数の培養条件での毛包再生実験が実施可能なPerfusion型の培養装置を開発することでこれを達成する.
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