研究課題/領域番号 |
26560223
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
吉見 靖男 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30267421)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子インプリント高分子 / 神経伝達物質 / 微細電極 / リエージェントレス / 酸化電流 / 電気化学 / センサ / 神経インターフェイス |
研究実績の概要 |
本研究を遂行するには、まず体内留置が可能な分子インプリント高分子(MIP)電極を作製することが重要である。本年度はMIP電極の微細化とリエージェントレス化を主な課題とした。 加熱して引き延ばしたガラス管は、直径10 µm程度まで微細化できるが神経組織や細胞に穿刺できるだけの強度を持つ。そこで申請者はまず、直径1 mmを電気生理学実験用ガラス管電極の作製に使われるプラーを用いた加熱引き延ばしによって、先端直径約30 µmのガラス針を作製した。そこへインジウム・スズ酸化物のゾルを塗布し、加熱して焼結し導電化した。さらに光ラジカル重合開始剤を固定し、機能性モノマー、架橋性モノマー、鋳型の混合溶液に浸して、紫外線照射することで、表面にMIPをグラフトした。ヘパリンを鋳型としたMIP電極でフェリシアン化カリウムのサイクリックボルタメトリーを行ったところ、酸化電流は試験液中のヘパリン濃度に良好に依存した。またセロトニンを鋳型としたMIPでフェリシアン化カリウムのサイクリックボルタメトリーを行ったところ、酸化電流はセロトニンによって増大するが、類似化合物のL-トリプトファンに対して応答しなかった。 リエージェント化としては、MIP電極にレドックス基を導入して、その酸化電流から鋳型を検出する方法を試みた。フェロセニル基を光重合開始剤とともにITO電極の表面に固定し、鋳型としてのセロトニンと、機能性モノマー、架橋性モノマーの混合液の中で紫外線照射することで、MIPを表面にグラフトした。フェロセニル基の酸化電流は、セロトニンに強く依存し、L-トリプトファンに対して応答しなかった。これはMIPに取り込まれたセロトニンの電極酸化に際し、フェロセンが電子伝達を促すメディエーター機能を果たしたと考えられる。 神経伝達物質でセロトニンを検出するセンサの微細化とリエージェントレス化について成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経伝達物質でセロトニンを検出するセンサの微細化とリエージェントレス化について成功している。アメフラシの神経節に留置して放出されるセロトニンを検出することは難しくないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果を下に、セロトニンのリエージェントレス微細センサ作製する。これをアメフラシの口球神経節に留置し、アメフラシの摂食行動に対応して放出されるセロトニンの検出を試みる。感度が十分でない場合は、フェロセンの導入密度、MIPの組成を変化させ、改善を試みる。またドーパミンやアセチルコリン、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸などの他種類の伝達物質に対するセンサの開発も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金(344円)に見合う必要物品が見当たらなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物のアメフラシや電極など物品費に主に使用する。
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