研究課題/領域番号 |
26560228
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
牧川 方昭 立命館大学, 理工学部, 教授 (70157163)
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研究分担者 |
田中 昌博 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (60163573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 嚥下 / 噛みしめ / 摂食・嚥下障害 / 柔軟ポリマー曲率センサ / 咬筋 / 喉頭蓋 / 食道 |
研究実績の概要 |
高齢者の死亡原因の4位である肺炎には誤嚥性肺炎が多いと考えられており、摂食・嚥下をモニタし誤嚥の可能性を警告できるシステムの開発が求められている.本研究では、1)柔軟ポリマー曲率センサの設定方法、2)携帯型噛みしめ/嚥下モニタシステムの開発、3)通常嚥下ならびに努力嚥下実験、4)噛みしめ/飲み込み行動の24時間連続計測を実施した. 項目1、2)に関しては喉頭隆起上と咬筋上の2箇所に柔軟ポリマー曲率センサを貼付し、センサの出力電圧を差動増幅器ならびに非反転増幅回路から構成する計測回路を開発し、喉頭隆起の移動、咬筋活動をモニタすることができることを確認した.項目3)に関しては健常成人男子を対象に、安静座位の状態で、市販の弁当とお茶を飲食させた.その結果、摂食物の違いは喉頭蓋閉鎖に影響を与えない、嚥下しやすい量で嚥下しており、試行毎に差はない、固形物を嚥下する方が、下顎を強く固定する(噛みしめる)必要がある、ことなどが明らかとなり、センサを用いた摂食/嚥下機能の評価に関しては、咬筋の動きの判別が容易であるため、嚥下機能の評価に適していることが明らかとなった. 引き続いては項目4)遂行のための日常生活の中で摂食行動がモニタ可能な“携帯型噛みしめ/嚥下モニタシステム“を開発した.本計測システムは2chの柔軟ポリマー曲率センサの出力電圧と押しボタンスイッチのグラフをPCに描画,また計測結果を計測システムに装着されたSDカード内保存することができる.今後は下顎が不安定な状態で嚥下することで誤嚥のひとつを再現し,正常の嚥下と比較し,嚥下における下顎の役割を明らかにする.また本計測システムは摂食動作に伴う下顎と喉頭隆起の動きの計側にも応用できると考えられる. 更に、運動中の足部骨格構造の変形の計測に柔軟ポリマー曲率センサを応用し、微小な骨格構造の変化を計測出来ることを示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の研究課題は、1)柔軟ポリマー曲率センサの設定方法の検討、2)携帯型噛みしめ/嚥下モニタシステムの開発、3)通常嚥下ならびに努力嚥下実験、4)ヒトの噛みしめ/飲み込み行動の24時間連続計測、の4項目である.この内、課題1)~3)については所定の成果をあげることができた.しかし、課題4)については、携帯型の噛みしめ/嚥下モニタシステムの開発を完了し、試行的な計測は出来たものの、十分な計測データを得ることは出来なかった.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度には、実際に歯科クリニックに携帯型噛みしめ/嚥下モニタシステムを持ち込み、性別、年齢、歯列の残存状態、嚥下機能低下の患者など、様々な被験者を対象に改定水飲みテスト(MWST)中の噛みしめ、嚥下計測、ならびに食事習慣、摂食時のムセの経験などの聞き取り調査を実施する.被験者としては、特に摂食動作に問題のない男女50名のコントロール群と、摂食動作に問題のある男女20名を予定しており、両者の噛みしめ、嚥下動作の違いを比較する. これらの歯科クリニックにおける実験で、嚥下、噛みしめに問題のあると考えられる患者に対しては、日常生活における摂食行動の24時間計測を実施する. なお、誤嚥の警告の可能性については、誤嚥事故時あるいは直前の警告が必ずしも有効かどうかも明らかではないが、むしろ、噛みしめと嚥下のタイミングのズレ、噛みしめ力の不足などから誤嚥事故の可能性を指摘することが事故防止に重要であると考えている.嚥下事故の可能性の警告で、調理方法の変更、摂食姿勢の確保など、本人の注意喚起が可能となる.そのため、噛みしめに関しては、噛みしめ力の大きさ、噛みしめ持続時間と嚥下動作時間の位相関係を解析対象とする 本24時間計測ならびに、前記のクリニック現場での短時間の水飲みテスト時の計測は、基本的に被験者への危険は少ないと考えられるが、大阪歯科大学研究倫理委員会、立命館大学研究倫理委員会での承認をとると共に、十分なインフォームドコンセント確保のため、患者への十分な説明をし、協力依頼を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
日常生活における摂食/嚥下行動をモニタできる装置を開発し、その動作を確認することは出来たが、当初計画していた、複数被験者による複数日の連続モニタリングを実施できなかったため、モニタリングに必要な機器の台数を揃えるための物品費(電子回路部品費)の購入に至らなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
複数被験者を対象とした、複数日にわたるヒトの日常生活における摂食/嚥下行動のモニタリングに必要な台数の機器を製作することに使用する.
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