高齢者の死亡原因の4位である肺炎には、誤嚥性肺炎が多いと考えられており、摂食・嚥下をモニタし、誤嚥の可能性を警告できるシステムの開発が求められている.本研究では、1.柔軟ポリマー曲率センサの設定方法、2.携帯型噛みしめ/嚥下モニタシステムの開発、3.通常嚥下ならびに努力嚥下実験、4.噛みしめ/飲み込み行動の24時間連続計測、5.歯科臨床現場における水飲みテスト実験、6.患者の噛みしめ/飲み込み行動の24時間連続計測の研究項目を実施することで、誤嚥事故の防止方法を検討することを目的とした. 研究最終年度には、項目5.、6.の臨床現場での使用に耐えうるシステムの開発と、嚥下機能の評価方法を明らかにするため、健常者を対象に様々な硬さの食物の嚥下実験を実施した.この内、嚥下計測システムの開発に関しては、協力メーカが柔軟ポリマー曲率センサの製造を中止したため、ひずみゲージを利用して、同等の曲率センサの開発を余儀なくされた.その結果、ひずみゲージを用いることでも、柔軟ポリマー曲率センサと同等の曲率検出能力を有するセンサの開発に成功した他、臨床現場で容易に計測状況をモニタできるLCDディスプレイ付きの携帯型嚥下機能モニタ装置の開発に成功した. また、後者の嚥下機能の評価方法に関しては、咀嚼回数が少ない程、嚥下開始から喉頭隆起が最上部まで移動する時間が長くなり、喉頭隆起が最上部まで移動から咬筋活動最大時までの時間も長くなることが示された.ヒトが嚥下しにくい食塊を嚥下する際には、反射的に下顎の固定を遅らせ,嚥下行動のメカニズムを調整していることが示唆され、上述の時間を計測することで、嚥下反射機能を定量評価できる可能性が示された.
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