研究実績の概要 |
自律神経系は、臓器内の生体情報を感知して脳へ送り(求心路)、全身の各臓器の機能を調節して(遠心路)、生体恒常性を維持するが、計測技術の不備のため、神経動態の理解は十分ではない。本研究は、胸腹部臓器(心,肺,胃腸,膵,脾,腎等)や骨格筋等を支配する自律神経の、臓器内の配置や構造、細胞動態について、独自の電気記録やイメージング等によって調べることを目的とし、将来の医療開発に繋がる基盤的理解を得ることを目指す。平成26年度は、世界最小ピッチのタングステン微小電極針アレイによる神経物理インターフェイス(=神経マイクロマシン、特許登録5041584)を利用して、従来法では記録が困難/不可だった求心性迷走神経の神経線維個々の電気活動を記録して、線維別に電気活動解析を行い、各種の刺激(メカノストレス等)への応答や、生体情報の感知を観察した。また一方、遺伝学的多次元蛍光イメージングについては、まず、ウィルスベクターや動物等を利用した遺伝学的な自律神経可視化技術を開発した。次に、特定臓器を支配する求心性迷走神経に蛍光分子(EGFP, RFP, GCaMP3等)を遺伝子導入した。この結果、従来の内因性分子を標的とした免疫組織化学解析では神経配置や構造を解明困難であった胸腹部臓器の求心性迷走神経について、外因性分子を導入することによって神経の臓器内の3次元配置や構造を解析できた。さらに、生動物において、この神経細胞の挙動を2光子顕微観察(Olympus)し、求心性神経の細胞動態や応答特性を一部において調べた。
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