研究課題
本年度は、自己支持性高分子ナノ薄膜の調製、ナノ薄膜上での細胞培養、ナノ薄膜への展開性向上を主に検討した。高分子材料として、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、光硬化性ポリエチレングリコール(PEG)を用いて数百マイクロからミリメートル径のナノ薄膜を作製した。ナノ薄膜直径の半分の径の注射針等の細管でナノ薄膜の吸引・射出が可能であり、射出後もナノ薄膜が元の形状に戻ることを確認した。PLGAナノ薄膜上にヒト由来網膜色素上皮(RPE)細胞を播種して培養したところ、RPE細胞は網膜色素上皮に特徴的なヘキサゴナルな細胞形態を示し、モノレイヤー組織を形成した。また、ナノ薄膜の表面粗さを増加させたところ、タイトジャンクションの形成が促進されることがわかった。ナノ薄膜のサイズが数ミリメートルスケールになると、液中での分散安定性が低下するため、ナノ薄膜への自己展開構造の付与を検討した。まず、引張ひずみを付与した伸縮層と支持層でナノ薄膜を挟み込んだ3層構造を用いることで、自動的な円筒形状形成を実現した。さらに、水溶性高分子であるポリビニルアルコール(PVA)を支持層と伸縮層に用い、これを水中で溶解して伸縮層に付与しておいた初期応力を解放することで、ナノ薄膜が平面形状展開することを確認した。今後、ナノ薄膜を細胞移植担体として用いる検討を行うとともに、ナノ薄膜への薬剤徐放機能、センサ機能等の搭載を行うことで、幹細胞治療実現を支援する医療デバイスとしての展開が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り研究が進行しているため。
大幅な研究計画の変更は考えておらず、当初の計画に沿って研究を遂行する。
物品費の見積もりに若干の誤差があったため。
少額であり、使用計画に大きな変更はない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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