研究実績の概要 |
本研究では、動物血清に含まれる細胞増殖促進/阻害や細胞接着制御に関わるタンパク因子群および脂質、有機酸を、浮遊血球系細胞をモデルに同定・プロファイリングし、100%輸入牛胎児血清(FBS)に頼る細胞培養法の改善を図ることを目的としている。また、同定した増殖因子・接着因子群の添加や脂質合成酵素群の遺伝子導入による血清(LDL)に依存しない細胞株の簡便な樹立法の確立を目指した。 平成27年度は、(1)LDLを代替する脂質のスクリーニングを急ぎ、市販のコレステロール含有脂質混合物が一定の増殖促進効果を持つこと。さらに解析したところコレステロールが最も重要な増殖促進効果を示す脂質であることがわかった。(2)この脂質と血清量を低減できることがよく知られている、インスイン,トランスフェリン,亜セレン酸(合わせてITSと略す)の混合物、組換えアルブミンを加えることで、低タンパク質無血清培地の試作品を調製できた。この低タンパク質無血清培地を調製する上で、必須の要件である組換えトランスフェリンは植物細胞で発現されたものが市販されていて、天然のトランスフェリンに匹敵する細胞増殖促進効果を持つことが再度確認できた。しかしながら、さらに計画していた(3)この無血清培地の試作品を利用した、新しいLDL非依存性細胞株樹立のための馴化法の確立や(4)コレステロール生合成関連酵素群の遺伝子を細胞に人工的に導入して、LDL非依存性株が簡便に樹立できるかどうか検討する実験計画も着手できなかった。一方で、メタボロミクス解析から、細胞増殖に影響を与える可能性のある低分子性の候補分子を血清中に見出すことができた。
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