研究課題/領域番号 |
26560243
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安中 雅彦 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40282446)
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研究分担者 |
松浦 豊明 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10238959)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 化学架橋ゲル / 水晶体嚢充填材料 |
研究実績の概要 |
本申請課題では,調節能力の完全な回復を可能とする水晶体嚢充填材料(レンズフィリング材料)つまり,水晶体変形と嚢内調節の2つのメカニズムにより調節が達成される人工水晶体を開発する。ここでは,最新の医学研究の成果を取り入れ,嚢内調節は,細胞の運動(Locomotion)と同様の機構で,水晶体皮質繊維細胞の細胞質のゲル化が起こると考え世界初の人工水晶体の創製を目的としている。 平成26年度は,①水晶体嚢を充填する化学的に安定なゲルの分子設計と調製法の確立,②屈折率1.43の再現を目標として検討を実施した。その結果,ブロック共重合体Pluronicを4本のアームに持つTetronicを用い,その末端にアミノ基とスクシンイミド基をを導入することでアミド結合をリン酸緩衝液中で形成させ,安定な化学架橋ゲルを作成することに成功した。さらに,このゲル中にかご型シルセスキオキサン-ポリエチレングリコール複合体.(PEG-POSS)を分散させることで,生体の水晶体と同じ屈折率1.43を有するゲルを作成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レンズフィリング材料を構成する高分子は,水晶体嚢内で安定して存在させる為に,ゾル状態の2種類の高分子鎖末端に反応性官能基を有するマルチアーム親水性高分子を水晶体嚢に注入する直前に注射器内で混合し,注入直後に嚢内で高分子末端間化学架橋ゲルを形成できるように設計することが,最も重要なポイントとなるが,本年度の検討でこの目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,ゲルの光学特性をより生体に近づけるために,ゲル中で屈折率を調整する成分であるPEG-POSSを人工水晶体中心部から前房方向に高濃度になるように濃度勾配を持たせることによって,毛様体の緊張,弛緩に応じて前房部の屈折力を可逆的に制御することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の目標である化学架橋ゲルの分子設計および合成法の確立が計画通りに進捗したため,化学薬品,ガラス器具糖の物品費の仕様が申請額に比べて安く抑えることが出来たためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,更なる物性向上を目指して,より精密な分子構造を有する化学架橋ゲルの作成を新たな検討項目として加え,さらに生体適合性試験のために使用する予定である。
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