研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスはその膜表面上にヘマグルチニン (HA) という糖タンパク質を有しており、HAが宿主細胞上の糖鎖と結合することで感染を開始する。そのため、HAに特異的に結合する分子は新規な感染阻害剤としての利用が期待される。これまでに、ファージライブラリー法を用いてH1およびH3型HAに特異的に結合するD1 (GLAMAPSVGHVRQHG) やs2(1-5) (ARLPR) ペプチドなどを得ている。ペプチド脂質C18-D1やC18-s2(1-5)のインフルエンザウイルス感染阻害活性をH1およびH3型ウイルスに加えてH5, H7, H9型に対するプラークアッセイにより評価を行ったところ、C18-s2(1-5)ペプチドはH1, H3, H5、H7およびH9型の5つの型に対して感染阻害活性を示したのに対し、C18-D1ペプチドはH5、H7およびH9型には阻害活性を示さなかった。次にそれぞれのペプチドとH1あるいはH5型ウイルス共投与時の細胞内ウイルス量をrealtime RT-PCRを用いて定量したところ、感染を阻害したペプチドはペプチド濃度依存的に細胞内ウイルス量を減少させており、細胞内への侵入を阻害している事が確認された。また、ABC (avidin-biotin cmplex) 法およびITC (isothermal titration calormetry) を用いてペプチドとH5型HA1の結合活性評価を行ったところ、D1およびs2(1-5)はともに高い結合活性を示した。そのため、ペプチドはHA1と結合するが、ウイルスの感染阻害活性と相関しないことが明らかとなった。 また、ヘマグルチニンに結合する新たなペプチド配列をファージライブラリー法で獲得し、さらに、インフルエンザウイルスの検出法へのペプチドの活用を行った。
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