研究課題/領域番号 |
26560246
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
佐藤 正人 東海大学, 医学部, 教授 (10056335)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アテロコラーゲンゲル / 軟骨修復再生 / 細胞シート / TGF-β1 |
研究実績の概要 |
本研究では、アテロコラーゲンゲルから作製したアセルラーシートを用いて、軟骨細胞シートの作用機序を詳細に検討すること、並びに軟骨細胞シート作製時と移植時の操作性向上を検討することを主たる目的として、アセルラーシートを細胞シートと併用した際の有用性を動物実験で確認し、さらに将来的な医療材料候補としての検討を行うため、関節軟骨並びに関節内周囲組織との接着性の検討とアテロコラーゲン細胞シート複合体の安全性に関してのフィージビリティスタディを行うことを目的とする。 平成26年度は、細胞成分を含まないアセルラーシートをアテロコラーゲンゲルで作製し、UV照射により架橋状況を変化させてハンドリングに適した強度の検討、並びに細胞シートの補助材としてのアテロコラーゲンの有用性を検討した。細胞シートに与える影響に関しては、特に細胞のviability、細胞シートとの一体性(接着性)、複合体の強度等についてin vitroで検討した。 アテロコラーゲンゲルに照射されたUV強度による軟骨細胞への影響の検討では、UV照射量が多くなるとアテロコラーゲンゲルは固くもろくなる印象があった。また、アテロコラーゲンゲル上での細胞増殖能も明らかに低下した。打ち抜き試験においてもUV照射が大きくなるとひび割れを認めるものもあった。アテロコラーゲンから作製したアセルラーシートへの細胞シートの積層化の検討では、アセルラーシート上に積層化細胞シートを重ねることが可能であったことから、細胞シート作製時と移植時のハンドリングの向上が期待できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画は、①細胞成分を含まないアセルラーシートをアテロコラーゲンゲルで作製し、架橋状況を変化させてハンドリングに適した強度の検討、②細胞シートの補助材としてのアテロコラーゲンの有用性の検討であり、細胞シートに与える影響に関して、特に細胞のviability、細胞シートとの一体性(接着性)、複合体の強度等についてin vitroで検討した。 その結果、アテロコラーゲンゲルに照射されたUV強度による軟骨細胞への影響の検討では、UV照射量が多くなるとアテロコラーゲンゲルは固くもろくなる印象があり、アテロコラーゲンゲル上での細胞増殖能も明らかに低下した。打ち抜き試験においてもUV照射が大きくなるとひび割れを認めるものもあった。アテロコラーゲンから作製したアセルラーシートへの細胞シートの積層化の検討では、アセルラーシート上に積層化細胞シートを重ねることが可能であったことから、細胞シート作製時と移植時のハンドリングの向上が期待できることが分かった。 軟骨細胞シートは、強固な剛性体ではないために細胞シート作製時や移植時のハンドリングに難点がある。既に、既存の臨床使用可能な医療素材を各種検討してきたが、そのままの使用で適したものは見つかっていない。今回、アテロコラーゲンゲルと積層化細胞シートの複合体の作製が可能であったことから、今後、in vivoで疾患動物モデル(家兎膝軟骨全層欠損モデル)を用いた関節軟骨の修復・再生効果やTGFβ1の徐放効果等の検討により軟骨細胞シートの作用機序を解明することで、将来的な医療材料候補として、ハンドリングだけでなく治療効果の向上も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
我々の最近の研究において、ヒト軟骨細胞シートでは、シートを構成する細胞数と同数の細胞単体集団と比較して約20倍も高濃度のTGFβ1を分泌していることを確認した(J Tissue Eng Regener Med 2012)。これらは、損傷部を被覆し、液性成分が局所に徐放可能でかつ高濃度で存在すれば軟骨の自己修復能が向上する可能性を示唆する。また、細胞シートの作用機序に関する研究として、疾患動物モデル(家兎膝軟骨全層欠損モデル:直径5mm、深さ3mmの自然修復しない大きさの骨軟骨欠損を作製する)にアセルラーシートを移植する無細胞群、アセルラーシートにTGFβ1を含浸させたTGFβ1徐放化群を作製し、細胞シート群と比較することで治療効果判定を組織学的に検討し作用機序を考察する。この際、3群の経時的な組織修復過程(術後1,3か月)を検討する。過去の軟骨細胞シートによる同様の動物実験結果(Biomaterials 2012)とも比較して、アテロコラーゲンから作製したアセルラーシートの有効性を検討する。さらに、カタボリックファクターが存在する関節液に暴露された状態でのアテロコラーゲンの分解時に炎症反応を惹起しないかどうかを明らかにする。また、将来的に医療材料として移植する細胞シートと共に患部に留置することが可能かどうかの安全性のfeasibility studyを行う。
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