研究課題/領域番号 |
26560250
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大矢根 綾子 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (50356672)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン酸カルシウム / 遺伝子導入 / トランスフェクション / サブミクロン / 粒子 / 細胞足場 / DNA / ナノコンポジット |
研究実績の概要 |
細胞足場機能と遺伝子導入機能を併せ示す材料は、in vivo組織再生のためのgene-activating scaffoldとして有用と期待される。近年研究代表者らは、リン酸カルシウム(CaP)過飽和溶液中での共沈反応を利用して、DNA-CaP複合体を基材上に固定する手法を開発してきた。本研究は、この複合体をgene-activating scaffoldに応用するため、複合体の形成条件を改良・最適化するとともに、遺伝子導入機能の向上を図ることを目的とする。 本年度はまず、gene-activating scaffold としての基礎的要件である、DNA-CaP複合体上の細胞への遺伝子導入機能と細胞分化誘導効果について確認した。次に、医療用輸液製剤を用いてCaP過飽和溶液を調製し、共沈反応時間を変化させ、DNA-CaP複合体の形成過程を追求するとともに、遺伝子導入効率に与える影響を調べた。 DNA-CaP複合体の形成過程を調べた結果、溶液中で生成した非晶質のCaP核が結晶化を抑制されたままサブミクロン球状粒子に成長し、基材表面に析出したCaP層の上に沈降・結合していくと考えられた。また、共沈反応時間を変化させると、DNA-CaP複合体を構成するサブミクロン球状粒子の数密度と集合状態を制御することができ、これを制御することで、遺伝子導入効率を向上できることが分かった。 以上の研究成果を、国内外の学術会議、work shopなどで発表した他、1報の査読付き論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初計画の通りに研究を進め、DNA-CaP複合体の形成過程を明らかにするとともに、細胞への遺伝子導入機能を向上させるための基礎的条件(共沈反応時間)を明らかにし、これらの成果を国内外の学術会議において発表した。また、gene-activating scaffold の基礎的要件を確認し、その成果を査読付き論文として発表した。 以上の状況より、本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
DNA-CaP複合体形成過程を調べた結果、過飽和溶液中でのCaPの均一核形成過程が、得られるDNA-CaP複合体の遺伝子導入機能に大きく影響することが判明した。そこで、均一核形成に影響する最重要因子である、過飽和溶液のイオン濃度の影響についても検討し、得られるDNA-CaP複合体の遺伝子導入機能の点からも、複合体形成条件の最適化を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に所属機関の組織再編が実施されることとなり、再編後には運営交付金の減額が予想されたため、26年度の支出を最低限に抑え、27年度に予算を繰り越す必要があった。繰り越しのための減額分は、26年度予算として所属部門から支給された運営交付金で賄った。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に用いる物品費(消耗品費)、ならびに成果発表のための旅費の他、人件費・謝金として、実験補助員(テクニカルスタッフ、1名)の雇用費と学術論文の英文校閲料、その他の経費として学会参加費と論文投稿費を使用する予定である。
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