研究課題/領域番号 |
26560252
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺川 貴樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10250854)
|
研究分担者 |
松山 成男 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70219525)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 粒子線治療 / ドラッグデリバリー |
研究実績の概要 |
本研究では,腫瘍への線量集中性が優れ,高い細胞致死効果を持つ粒子線照射と,抗がん剤を腫瘍に効率的に伝達して抗腫瘍効果を低副作用で誘発するナノサイズ薬物運搬体のドラッグデリバリーシステムを用いることにより,難治癌に対して従来よりも低線量・低副作用で高い治療効果をもたらす新規化学粒子線治療法の開発を目指す.平成26年度は、動物実験用の粒子線照射形成デバイスを開発し照射テストを実施した。さらに、腫瘍移植マウスを用いて試験的な治療実験を実施し、本治療法の投与線量、CDDP(シスプラチン)ミセル投与時期・作用量等について治療プロトコルを決定した。具体的には、マウス腫瘍が対象となるため、直径10 mm程度のマウス腫瘍標的の形状を想定し、陽子線を照射するための拡大ブラッグピークを形成するエネルギーフィルター、ボーラス、コリメータ等の治療用デバイスを開発した。さらに、開発デバイスによる照射テストを実施し、水ファントムにおける線量形成により、所定の線量分布を形成することに成功した。 照射システムを用いて、線維肉腫腫瘍細胞を移植したマウスによる予備的な治療実験を実施した。陽子線線量分布、陽子線の投与線量、CDDP投与量、併用治療時のCDDPミセル投与タイミング等の治療条件を設定し、腫瘍増殖遅延効果などをもとに治療条件の最適化を図り、次年度実施予定の治療実験用プロトコルを決定した。また、CDDPミセルによる腫瘍および正常組織への薬剤集積を評価するため、マウスから摘出された腫瘍サンプル中の白金元素濃度をPIXE(Particle-induced X-ray emission)法により分析し、通常のCDDP投与に比べて効果的に薬剤が送達されていることを確認した。一方、正常組織に関しては、CDDPミセル投与の場合では、投与量を増加してもCDDPの集積量は増加せず副作用を低減できる可能性も示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験用の粒子線照射形成デバイスの開発が完了し、照射テストを実施した。さらに、腫瘍移植マウスを用いて試験的な治療実験を実施し、次年度の本格的な治療実験のための治療プロトコルが作成され、当初の研究計画は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞を移植したマウスによる本研究の治療実験を開始する。治療条件としては、陽子線とCDDPミセルの併用治療群,陽子線単独治療群、CDDPミセル単独治療群、コントロール群を設定する。各条件でのマウス数は5以上とする.治療後1日毎の腫瘍体積の計測から腫瘍縮小による増殖遅延を評価し、各治療群における抗腫瘍効果を比較する。また、治療効果判定のために、1 mm以下の空間分解能を達成している小動物用超高分解能半導体PET装置を用い、腫瘍内の糖代謝、低酸素状態の分布について治療期間中にマウスが生きたまま随時診断する。以上の治療研究を総括し、研究成果を学術論文、国内学会、国際会議で発表する。
|