研究課題/領域番号 |
26560258
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 浩基 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (70391274)
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研究分担者 |
櫻井 良憲 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (20273534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中性子捕捉療法 / 加速器中性子源 / 遮蔽材 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はホウ素中性子捕捉療法において、エネルギーの異なる中性子及びガンマ線の混在場に適応可能な遮蔽材を開発することと、新しい中性子測定手法を用いてその遮蔽効果を評価することである。照射される患者の体の各位置において中性子エネルギースペクトルとガンマ線線量率が異なることからそれぞれの位置で、それぞれの中性子エネルギーに適した遮蔽材の組み合わせを導出する必要がある。平成26年度~平成27年度には遮蔽材の最適化を行い、遮蔽実験を実施した。原子炉中性子源が稼働していなかったため、RI線源を用いて遮蔽実験を行った。RI線源からの中性子強度が原子炉中性子源と比較して弱いため、放射化法による測定はできなかったが、熱中性子に感度を有するシンチレーション検出器を用いて中性子の遮蔽能力を確認した。また、ガンマ線の遮蔽能力に関しても同様に、シンチレーション検出器を用いて、照射実験を実施した。フッ化リチウム含有ポリエチレンを原料とする中性子遮蔽材の粒径をできるだけ小さくすることで、中性子に対する遮蔽能力が向上することが示された。得られた遮蔽実験の結果を遮蔽材の最適化結果にフィードバックすることができた。 平成28年度においてはフッ化リチウム含有ポリエチレンの粒を吸引バックに封入することで、自由に変形可能な遮蔽材を製作した。脳腫瘍、頭頸部、体患部用の三つのサイズを作成した。それぞれ、コリメータサイズと同じ径の穴を設ける事で、治療ビームが遮蔽されない構造とした。原子炉中性子源が稼働しなかったため、RI線源を用いた遮蔽実験を継続し、遮蔽材の性能を評価した。今後は原子炉中性子源を用いて実用化に向けた照射試験を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原子炉中性子源を用いた遮蔽実験は実施することが出来なかったが、最適化した遮蔽材に対してRI線源を用いて、照射実験を継続して実施し遮蔽能力の確認は順調に遂行することができている。一方、新しい中性子検出方法については、強度の高い中性子源が必要になってくるため、原子炉中性子源が稼働した後に、速やかに実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度~平成28年度で最適化し製作した自由に変形可能な遮蔽材に対して原子炉中性子源を用いた遮蔽実験を実施する。遮蔽実験時には熱中性子の二次元分布取得には金箔を用い、高エネルギー中性子分布取得にはアルミ、及びサーベイした放射化箔を用いる。最終的には実際に原子炉中性子源と人体等価ファントムを用いて実用化試験を実施し、全身被ばく軽減の効果を確認し、成果を取りまとめる。臨床研究への応用まで実現したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に研究用原子炉の重水照射設備を用いて、開発した遮蔽材の実用化試験を実施し、その成果を日本中性子捕捉療法学会等にて発表を行う予定であった。しかし、研究用原子炉の再稼働が平成29年度になったことから、計画を変更し、平成29年度に実用化試験を実施することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
実用化試験で必要となる放射化箔及び消耗品を購入する予定である。また成果を取りまとめて、学会で発表行うための旅費として使用する予定である。
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