研究課題/領域番号 |
26560261
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高井 昭洋 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70632917)
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研究分担者 |
高田 泰次 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10272197)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 上方照明システム / 腹腔鏡手術 / 陰影の手がかり / カダバー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,これまでに開発した腹腔鏡手術用新規照明デバイスを用い,大型動物およびカダバー(ご遺体)による臨床応用を目指した上方照明システムの有用性を明らかにすることであった.平成26年度の研究計画では,大型動物における照明システムの客観的評価およびカダバーによる手術を可能とする,すなわち実臨床で使用可能な照明デバイスの開発であった. 以上の計画で始まった研究において,平成26年度には,主として動物実験よりもカダバーによる検証作業を先行した.これまでに開発した新規照明デバイスは,ヒトに応用するためには,全体的に大きいと考えられた.そこで,その改良が先行され,ヒトで使用可能なプロトタイプが製作されてから,そのデバイスを利用した大型動物を犠牲とする研究を行う方が妥当と考えたためである.そこで,まずは,カダバーにおいて,現行の照明デバイスを用いた腹腔鏡手術を行った.手術に先行し,気腹したカダバーで,体壁の変化を腹部CT検査で撮影した.これにより,照明デバイスを挿入・設置したときに,どの部位に設置するのが適当か,どの部位が照明されて,どの部位が照明されにくいかのなどのシミュレーションを行い,現在,その結果の解析中である.その後,カダバーにより腹腔鏡下に胃,小腸,胆のう,肝臓,脾臓の手術を行い,上方照明システムによって手術可能部位とそうでない部位が検討された.これまでの結果では,動物実験時と同様,横隔膜下近傍での照明が不十分になり,暗くなること,影になりがちになることなどが判明した.一方,それ以外の部位では,動物実験同様,立体的で美しい手術映像が得られることが判明した. 現在,腹部CTデータを元にした照明デバイスの開発とさらなる腹腔鏡手術データを収集中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の計画では,動物実験とカダバーによる手術研究を並行して進めていく計画であった.しかし,動物愛護の観点から,ヒトに応用可能な照明デバイスのプロトタイプの完成を待って,動物実験を進めることに変更した.現時点で,気腹状態の人体の腹部CTデータの収集は完了しており,このデータを元にした適切な照明デバイスの開発を行っているところであるために,動物実験についての検証作業が遅れている. 一方で,カダバーにおける手術検証は,平成26年度にはおおむね順調に進んだ.しかしながら,当大学におけるカダバーによる研究は,手術手技研修センターのある解剖実習室を使用して行うが,4月から8月にかけて,解剖学教室が学生の正統解剖に使用するために,カダバーによる研究で使用できる時間が十分に確保できなかった.そのために,全体として,研究計画がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
カダバーによる腹腔鏡手術のノウハウは,平成26年度の研究により,ほぼ確立したと考えている.したがって,平成27年度には,カダバーによる手術検証が平成26年度以上に積極的に行えると考えている.大型動物実験については,検証する内容に変更はない.しかし,そのタイミングとして,ヒトで応用可能と思われるデバイスのプロトタイプの完成を待ってから手術による検証を行うことに変更した.これは,カダバーによる手術検証ができるようになったためであり,動物愛護の観点からも,より実臨床に近いデバイスの検証として行う方が良いと考えるようになった. 照明デバイスの開発については,開発元のエヌズエンタープライズ社および調整役としての愛媛大学社会連携推進機構と綿密に連絡を取り合って,この開発を早急に進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は2点あります.ひとつめは,平成26年度の研究がやや遅れ,国際学会への研究成果発表までいたらず,この機会がなかったために,これらに計上していた費用が使用されませんでした.ふたつめは,大型動物実験を,ヒト用照明デバイスが完成してからこれを用いての客観的評価とすると方針と変更したためで,これら動物実験として計上していた費用が使用されませんでした.以上が,次年度使用額が生じた理由です.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,ヒト用照明デバイスを完成させることで,動物実験による客観的評価および国際学会への研究成果発表を行います.これら,平成26年度にできなかったことに繰り越した研究費を使用させていただき,平成27年度は当初の予定通り,カダバーでの研究を進めることおよびその成果を論文化することに研究費を使用させていただきます.
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