平成27年度の目標は,1. ヒト用の照明デバイスの開発を行うこと.2. ヒトに応用可能な照明デバイスを開発後,動物実験として,手術時間を主評価項目としたクロスオーバーデザインによる手術の質の評価を行うこと.3. Cadaverによる腹腔鏡手術を行い,手術の実現可能性を検証することであった.1の照明デバイスの開発では,照明装置開発を提携している企業担当者との月に1度のミーティングを重ね,照明装置開発を進めた.平成26年度の成果として,ヒト用の照明デバイスに要求される照度や色味などのスペックについての情報を共有することはできた.しかし,平成27年度に目標としていた,ヒト用に臨床応用可能な照明デバイスは開発しきれなかった.問題点は2点あり,体外の照明装置からファイバーを経由して導光する時の光量の減衰の問題と導光した光を拡散光として光らせる技術的問題を研究期間内に解決しきれなかったためである.2の動物実験については,新しい照明デバイスが開発しきれなかったこととから,動物保護の観点からも動物実験による検証は行わなかった.3のCadaverによる腹腔鏡手術研究は,現有する動物実験用に開発した照明デバイスを用いて,本年度も施行した.術式としては,胃切除術,結腸切除術,肝切除術,脾臓摘出術,膵尾部切除術,直腸固定術などであり,Cadaverによる腹腔鏡手術を安定して施行できるようになったことは,今後の研究を進める上での重要な成果としてあげられる.一方,ヒト用のデバイスでの研究とはならなかったために,臨床応用を考えたとき,手術において最も関心のあった,手術器具と照明デバイスの干渉については検証しきれなかった.また,動物用の照明デバイスで暗くなってしまっていた横隔膜下近傍の領域をどれほど明るく照らせるか,臓器の背面になったときに,どれほどの効果があるかについても,残念ながら検証しきれなかった
|