研究課題/領域番号 |
26560268
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小嶋 一幸 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任教授 (60313243)
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研究分担者 |
伴 大輔 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (40376736)
小林 宏寿 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (70451953)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内視鏡外科 / 腹腔鏡下手術 / 実態臓器モデル / 技術評価 / 教育 |
研究実績の概要 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術などの比較的単純な手術では多くのシミュレーターが開発されてきているが、実際にこれを内視鏡外科の専門医が操作すると実臨床とはかけ離れたゲームのようなものばかりであり、実際の手術には全く役に立たない。このような現実とシミュレーターの解離の状況を打破できる唯一の方法は人体に限りなく精巧に近づけた実態臓器モデルの作成である。組織の堅さやもろさ、構造、弾力などまでできる限り生体に近づける必要がある。これを実際に手術で使用する鉗子や持針器、針、糸を用いて検証する。すなわちリアリティーこそが最も重要であると考える。そのために内視鏡外科のエキスパートから、医員、研修医、学生に至るまで実際に多くのしかも技術レベルも様々な医療関係者に使用していただき、前述した因子について細かくフィードバックを受けた。試作品の内容はわれわれの実績のある腹腔鏡下幽門側胃切除術の実態臓器再建モデルと食道空腸吻合モデルを作成した。試作期間は約3ヶ月、フィードバック期間を3ヶ月と1年間で2回ほど実態臓器モデルを試作、評価することが可能であった同時に実態臓器モデル試作品の評価に携わった医師に関しては臨床現場での技術評価を別に行い、試作品を用いた各種技量のパラメーターとの比較解析を行ってった。網羅的解析により実態臓器モデルでのパフォーマンスのどの因子が臨床的技術評価に結びつくかを統計的に絞り込んだ。その結果、吻合の確からしさは水を入れたリークテストにて極めて簡単に客観的に評価が可能であった。しかしながら、このテスト自体の難易度が極めて高く、これがスムーズに可能でかつリークテストもマイナスであれば、実際の臨床でもまったく困らないレベルであることがわかった。手技にかかる時間と技量との間に相関関係があることが示唆されたが、症例数が少なく、統計的な解析には更なる被験者の蓄積が必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内視鏡外科のエキスパートから、医員、研修医、学生に至るまで実際に多くのしかも技術レベルも様々な医療関係者に使用していただき、前述した因子について細かくフィードバックを受けた。試作品の内容はわれわれの実績のある腹腔鏡下幽門側胃切除術の実態臓器再建モデルと食道空腸吻合モデルを作成した。試作期間には約3ヶ月かかり、フィードバック使用期間を3ヶ月と1年間で2回ほど実態臓器モデルを試作、評価することが可能であった。この2回でほぼ理想的でリアルなモデルができたと考えている。同時に実態臓器モデル試作品の評価に携わった医師に関しては臨床現場での技術評価を別に行い、試作品を用いた各種技量のパラメーターとの比較解析を行ってった。網羅的解析により実態臓器モデルでのパフォーマンスのどの因子が臨床的技術評価に結びつくかを統計的に絞り込んだ。その結果、吻合の確からしさは水を入れたリークテストにて極めて簡単に客観的に評価が可能であった。しかしながら、このテスト自体の難易度が極めて高く、 これがスムーズに可能でかつリークテストもマイナスであれば、実際の臨床でもまったく困らないレベルであることがわかった。これらの条件をクリアできるのは内視鏡外科学会の技術認定相当レベルであった。これらの中では手技にかかる時間と技量との間に相関関係があることが示唆されたが、症例数が少なく、統計的な解析には更なる被験者の蓄積が必要と考える。2つのモデル間での相違はなく、この点は臨床との間に乖離が見られたが、その理由は、通常の食道空腸吻合に比べて、このモデルは肝臓や、食道裂孔などの周囲臓器により手術が難しくなることが少ないことが要因と考えられた。 そのため、より実践的なモデルに近づけるためには、3Dプリンターなどで周囲の臓器ごと再現することが必要と思われ、今後対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、完成した実態臓器モデルを本学の講習会で使用し、新しい技術評価の指標の中から最終的な指標を1つに絞る。この妥当性の検証を進めると同時に初年度に築いた知見に基づき、肝胆膵外科、泌尿器科モデルの作成に着手する。同時に網羅的な解析で得られた技術評価の因子がこれらの診療科モデルにおいても妥当で、再現性があるか否かの検討を行う。これらの新モデルも東京医科歯科大学低侵襲医学研究センター講習会で使用し、さらに多くの医師のフィードバックを受けることを予定している。
平成28年度は新たに選んだ技術評価の項目の妥当性と、実態臓器モデルの有効性の最終評価を行う。低侵襲医学研究センターの講習内容は実態臓器モデルを用いたトレーニングによって行い、新たな評価法の下に受講者に適切なアドバイスを行い、スキルアップを図っていただく。同時にこの実態臓器モデルでのトレーニングを完遂した受講者が実際にこの手技を施行可能となっているのかをprospectiveに検証する。このデータを分析し、学術誌に報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
周辺臓器を3Dプリンターで作成することとしたが、残額が少なく購入できないため、 翌年度の予算とともに購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
3Dプリンター購入資金として使用する予定
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