平成28年度は前年度より継続して、描画および静止画のアイトラッキングを用いた四肢認識の計測を行った。研究①(描画を用いた四肢認識研究)について、平成28年度は43名に計測を行い、期間全体を通じて総計72名(健常小児15名、患者57名)となった。この参加者には、視覚認識と比較するため研究①´(言語を用いた四肢認識研究:身体部位の名称の知識)を追加した。研究②(非接触型アイトラッカーを用いた静止画像の四肢認識研究)について、平成28年度は13名に計測を行い、期間全体を通じて総計38名(健常小児13名、患者25名)となった。 患者では二分脊椎症児の参加が最も多く、二分脊椎児の描画(研究①)は、健常児と比較して手および足の描画が有意に少なく、言語(研究①´)でも手と足の知識が低かった。一方、静止画のアイトラッキング(研究②)では、四肢領域について健常児と比較して有意な違いはなかった。次に参加が多かった四肢形成不全児は、描画(研究①)は上肢形成不全児で手の描画が有意に少なかった。一方、下肢形成不全児は欠損部位も描出していたが、言語(研究①´)では手および足の知識が低かった。静止画のアイトラッキング(研究②)では有意な違いはなかった。 二分脊椎児の結果からは、手および足が相同器官であるためその認識が互いに影響すること、四肢形成不全児の結果からは義肢の使用(下肢欠損では移動のため義足の使用率が高いが、上肢欠損では特に片側欠損で使用率が低い)による四肢認識への影響が考えられた。 本研究により四肢の麻痺および欠損が、四肢の認識に与える影響を明らかにすることができた。今後はこの成果をリハビリテーションおよび義肢装具治療に還元し、患児の運動機能の向上や、麻痺・切断端の褥瘡・創傷予防に役立つ手法を開発していく予定である。本研究の研究成果は、国際雑誌への投稿を準備しており、一部はすでに投稿中である。
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