我々は、これまでにedaravoneが障害刺激に対するアストロサイトの活性化を抑制し、脳浮腫を惹起するVEGFの発現を抑制することを明らかにしてきた。また。神経細胞とアストロサイトの共培養系での障害モデルにおいて、edaravoneが移植神経細胞の神経網形成を促進し、この促進効果に細胞内情報伝達系としてNFkB系が関与していることを示唆できた。今年度はこれらのin vitroでの現象がin vivoでも見られるのかどうかを動物実験にて検討した。ラット中脳黒質右側に、6-OHDAを定位脳的に注入し、パーキンソン病モデルを作成した。1週間後に、アポモルフィン負荷行動試験により,パーキンソン病発症を確認後、さらに1週間後に胎仔ラットの黒質組織を右線条体内に移植し、同時にedaravoneを投与し、その抗パーキンソニズム効果をアポモルフィン負荷による行動学的観察により評価した。また組織学的に抗tyrosine hydroxylase染色による移植細胞の生着、抗GFAP染色による反応性アストロサイトの誘導などを検討した。反応性アストロサイトの減少を認めたが、TH陽性細胞・線維の増加は認めず、また行動学的観察において、edaravone投与による上乗せ効果は認められなかった。障害刺激に対し、アストロサイトはその活性化とともに、VEGFの発現増加により、神経再生を阻害する可能性がある。パーキンソン病モデルラットにおいて、edaravone投与によるアストロサイトの活性化の抑制を組織学的に認めたが、行動学的観察においては抗パーキンソニズム効果は認められなかった。今後は、edaravone投与のタイミングや他の薬剤の投与、他の障害モデルにおける検討が必要であると考えられた。
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