研究課題/領域番号 |
26560275
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中野 治郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20380834)
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研究分担者 |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
関野 有紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (90718991)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 線維筋痛症 / 慢性痛 / リハビリテーション / 理学療法学 / 運動療法 |
研究実績の概要 |
平成26年度では,長期間の下肢不動による新たな線維筋痛症モデルラットを開発することを目的とし,実験を行った.具体的には,実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット29匹を用い,対照群(n = 11)と右側足関節を最大底屈位で4週間ギプス固定する不動群(n = 18)に振り分け,Randall-Selitto testにて腓腹筋の圧痛覚閾値を測定した.実験期間終了後,一部のラット(対照群,n=5;不動群,n=6)から腓腹筋を摘出し,筋組織における病理所見の確認を行った.また,一部の腓腹筋を用いてNGF含有量の含有量をwestern blot法にて測定した.残りのラット(対照群,n=6;不動群,n=12)は,NGFレセプター阻害実験に供した.NGFレセプター阻害実験では,腓腹筋にNGFレセプターの拮抗物質であるK252aを筋内投与し,投与10分から60分後まで腓腹筋の圧痛覚閾値の変化を観察した.結果,不動群の筋圧痛覚閾値および足部表在の痛覚閾値は不動2週目から対照群と比較して有意に低下し,その状況が不動期間終了まで継続した.不動期間終了後,対照群および不動群の腓腹筋では,筋線維損傷などの病理所見はいずれも認めなかったが,不動群では筋内NGF含有量増加を認めた.また,NGFレセプター阻害実験の結果,K252aを投与すると10分後より圧痛覚閾値は有意に上昇,つまり回復した.以上のことから,関節不動により線維筋痛症に類似する症状の発生を認め,そのメカニズムには過剰なNGFの発現増加が関与していることが示唆された.今後,中枢性感作の発生の有無を確認し,線維筋痛症モデルとしての妥当性を高め,それを踏まえて運動負荷実験へ進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では,足関節不動モデルラットの骨格筋の痛覚閾値の低下が慢性化する時期を明らかにし,その骨格筋における痛覚閾値の低下に対するNGFの関わりを明らかにすることが目的であった.「研究実績の概要」に記載したとおり,予定の知見は得られ,すでに次の段階として中枢神経系の解析を既に進めている.よって研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では,不動により痛覚過敏が惹起されたが,これが線維筋痛症モデルとして妥当かどうかを検証するためには,中枢性感作の有無を確認する必要がある.したがって,平成27年度では,脊髄後角に分布する神経ペプチドを評価していく.中枢神経感作が確認された後には,そのトリガーとなる末梢組織の変化を探索していく.平成26年度では,不動による骨格筋の痛覚過敏の発生メカニズムにはNGFの過剰発現が関与していることが示したが,NGFの由来細胞やその原因は明らかにできていない.また,NGF拮抗物質の投与により痛覚過敏の軽減を認めたが,正常レベルには回復していない.つまり,NGF以外の要因が関与している可能性が高く,その1つとしては末梢神経線維密度の増加を予想している.平成27年度は,上記の2点を明らかにすることを第一の目的とし,研究計画書に従って実験を進める.また,運動負荷実験の予備実験を行う.運動負荷方法としては,トレッドミル走行を予定しているが,懸念されることは運動負荷によるストレスの影響である.予備実験でその評価を行い,過剰なストレスの発生が確認された場合は,運動負荷方法を再検討する予定である.
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